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「ば、馬鹿じゃないの!?」
メリッサがヘッドの胸ぐらを掴むが、
「俺が馬鹿なことぐらい分かってんだよっ!!」
ヘッドはそれに逆切れして睨み返していた。
「いいか!? 俺だって、自分がこんな甘ちゃんになったのなんて信じられねぇよ!? 俺はお前の言うところの馬鹿だが、俺は何を捨ててもメリッサを助けてぇんだっ!! それが俺の出した答えだ! 文句あるか!?」
胸の内を、すべて吐き出す。
こちらの想いを伝えれば、メリッサを説得することが――
「ふ、ふざけんなっ!」
思い切りぶんなぐられた。
手加減なしの一発を頬にくらい、ヘッドは石畳に転がってしまう。
反射的に顔を上げ、ヘッドは吠えるように口を開いた。
「ふざけてるわけねぇだろが!? 俺は大真面目だ――って、おい?」
しかし、そんなヘッドは、目の前で起きた事が信じられなかった。
なぜなら、あの誰よりも頼りになる、馬鹿みたいに巨大なゴーレムだって、ドラゴンだって、作戦を立てれば軍隊だって一人で壊滅させちまうような戦士であるメリッサが――目に涙を浮かべていたからだ。
どれほど過酷な戦場でも、見たことがない。
メリッサの涙を、ヘッドは初めて見た。
「アンタがいなくなったら、私はどうなるのさ?」
いつもは馬鹿みたいに笑ってる癖に、それはまるで、少女のように儚く繊細な泣き顔で。
ヘッドはそれを、ただ呆けるように見つめることしかできない。
「……」
「私が――そんなことをされて、嬉しい訳ないだろうがっ!!」
メリッサはヘッドの胸ぐらを掴んで、その身体を無理やり引っ張り上げる。
「お、俺は――」
ただ、メリッサに生きてほしかっただけだ。
なのに、なんで泣くんだよ。くそったれ。
噂には聞いていたが、女の涙がこんなに強いなんて、初めて知った。
「アンタがその気なら、私にも考えがある!!」
メリッサは震える唇で宣言する。
「ア、アンタが、も、もしも、私だけを残して逝ったら――悠久の魔女もミーナもタルサも、全部まとめて殺してやるっ!!」
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