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 メリッサが、もう耐えられないと叫ぶ。


「本当のことを言いなよ!」


「……」


 口を閉ざすヘッドに、メリッサはさらに気落ちしていく。


「私の存在は、それを聞き出すこともできないほど軽いモノなのかい? それぐらい私はヘッドの役には立てないのかい? ヘッドが何かを背負ってるなら、私も一緒に背負わせておくれよ? 私たちは、そのためにひとつになったんじゃないか!」


 メリッサの眼差しに、ヘッドは耐えられず視線をそらした。


「……騙したのは謝る」


「なら、本当のことを話しなよ?」


 嘘をつき続けるのも、ここが潮時かも知れない。


 真実を話したところで、メリッサを説得することはできないかも知れない。


 むしろ逆効果である可能性も高い。


 それでも、話すべきなのだろうか?


「……先に言うが、俺が嘘をついたのはメリッサのためだ。それに、あいつらには何一つ嘘はついてない。あいつらはあいつらのために、納得して俺に付いてくれた」


「……自分のために、命乞いのために戦ってるなんて言ったら、許さないよ?」


「俺だって、そんな腑抜けを選んじゃいねぇよ」


「なら、どんな理由が――」


 メリッサの言葉は、ヘッドの表情を見て失速した。


 その先にある言葉の重さに、メリッサは初めて気づいたようだが、ヘッドはそのまま言葉を続けるしかなかった。


「俺があいつらに約束したのは、自分の命じゃない」


「……」


「俺がタルサと約束したのは〝誰か一人を生贄から外す権利〟だ」


「そ、そんな!?」


 ヘッドのその一言で、メリッサにはあいつらの想いが伝わったのだろう。


 あいつらは自分よりも仲間や家族のことを大切にする馬鹿ばかりだ。そんな奴らは、悠久の魔女様が死んでいると知らされ、その先にこの条件を提示された。


 あいつらは悩んでいたが、出した答えは全員が同じだった。


 生贄から逃れることができれば、自分の大切な人は、悠久の魔女様の新たな国で安全に生きていくことができる。そんな餌をぶら下げられて、飛びつかないハズがない。それはヘッドが、そんな餌に飛びつく優しい奴を仲間に選んだからだ。


「でも……それじゃ、私のためってのは――アンタ、まさか!?」


 メリッサの動揺は、そのまま答えを射抜いていた。


 脳筋野郎に見えて、やはりメリッサは頭がいい。


「……だから、言いたくなかったんだ」


 ヘッドはうつむきながら答える。


 ヘッドは、その言葉でメリッサを説得できると信じるしかない。




「俺がタルサの条件を受け入れたのは、お前を助けるためだ」



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