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 俺の言葉に、ロウは薄く笑った。


「それなら問題ねぇ。今、開けてやる」


 ロウが鍵を開けてくれている間に、俺は不意に思いついた疑問を口にした。


「……ロウさんは、どうして反対派なんですか?」


 ロウは目を細め、口から煙を吐き出した。


「俺も悠久の魔女様に恩が無いといえば嘘になる。手伝うなら生贄から除外すると条件も持ちかけられたし――とりあえず様子を見ることにしたんだが、やっぱり、俺は俺の部族を裏切るような真似はできなかっただけさ」


 ロウは改めて煙草に口をつけ、


「俺は医者だ。純粋に数の多い方に価値があると思った――ってだけだが、俺だけでやりあうには相手が悪すぎる」


 ロウは短くなった煙草を燭台に押し付けて消すと、俺を見据えて続けた。


「ヘッドだけならまだしも、タルサを止めるには切り札がいる」


 タルサの凄さは、俺が誰よりも知っている。


 タルサにとっては、この世の全てが知っていることであり、タルサの裏をつくことなど誰にもできはしないだろう。


 思わず押し黙る俺に、ロウは笑った。


「一人だけ、それができそうな奴がいるだろうが?」


 ロウは俺を、まっすぐに見据えていた。


「俺が?」


 ロウはうなずいて言葉を続ける。


「タルサは最強のカードに違いない。だが、逆に言えば、この戦いはタルサさえこちらに引き抜ければ、それだけで勝てる戦いと言っても過言じゃねぇんだ」


 ロウが鍵を開け終え、腰に付けていた剣を握る。


 それは見覚えのある、ヘッドに買ってもらった〝異国の魔剣〟だった。


 お屋敷に隠しておいたそれを、ロウは手に入れてきたらしい。


「この魔剣を拝借する時に、屋敷に置いてあった水晶で魔力も補充しといてやった」


 魔剣の柄にある水晶は虹色に輝いていて、その輝きは魔力そのものなのだろう。


 ロウがその魔剣を一振りし、俺の手首へと向ける。


 俺の手元で黒い腕輪が音を立てて割れ、黒い靄となって消滅した。


「便利なモンだな?」


 自由になった俺を満足そうに見つめ、ロウは言葉を続ける。


「タルサがシュウに真実を隠してたのは、シュウがタルサにとって最大の脅威だからだ」

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