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苦笑するアリシアの言葉に、引っ掛かりを覚えた。
どちらか一つ。
ミーナさんとタルサを手伝って、悠久の魔女を蘇らせるのか。
それとも、ミーナさんとタルサを否定して、エターナルの国民を守るのか。
この問いには、完璧な答えなんて存在しないのだろう。
俺はアリシアと同じで、どっちも選びたくないってのが本音かも知れない。
……どっちも選びたく、ない?
……。
「本当に、その二つしか選べないのか?」
「……他にも何か、選択肢があるっていうの?」
アリシアが俺の言葉に戸惑っているが、俺には既視感があった。
あの時と同じだ。
タルサを助けるのを諦めかけたあの時、俺は別の選択肢を創り出した。
俺が信じるのを辞めなければ、その可能性は残されているハズだ。
「俺はミーナさんの想いも、エターナルの国民も、諦めたくない」
俺の答えに驚いていたのは、アリシアだけではなかった。
「面白い話をしてんじゃねぇか?」
視線を声の主へと向けると、そいつは口から煙を吐き出していた。
頬にある古傷は歴戦の剣士のようで、鋭い眼光はただの医者には見えない。医者のくせに毎日どれだけの煙草を吸えば気が済むのだろう?
白衣を着たリザードマンが、牢屋の外から俺を見つめていた。
「ロウさん!」
「よう」
ロウは牢屋の鍵を取り出したが、それを見せつけるように動きを止める。
「は、早く開けなさいよっ!」
アリシアが吠えるが、ロウはかぶりをふった。
「……ヘッドは悠久の魔女様を蘇らせるのに賛成らしい。そして、俺は唯一の反対派だ。だから、お前を仲間に引き込もうと考えてたが、厳密な意味でお前は反対派じゃねぇんだな?」
隣のアリシアが言葉を閉ざし、ロウも静かに俺の答えを待っていた。
俺は〝願い〟の力を使えないのなら、ただの高校生に過ぎない。
剣術の稽古は一か月間やったが、それがどこまで通用するかは未知数だし、ロウさんの足手まといになる可能性だってあるだろう。
それでも、
「俺は少なくとも、エターナルの国民を生贄にする気はない」
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