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「カルヴァン! タルサさんの話は本当なんですか!?」
タルサと別れ、自室で声を荒げるミーナの影から、ぼこりとカルヴァンが姿を現した。
黒い塊であるカルヴァンは、タルサと同じようにため息をつく。
「それを隠すことが、ネルの願いであったのだ」
「で、でも、カルヴァンは私との契約で、ネル姉さんを助けることが最優先のハズです! どうして――そんなことを許したのですか!?」
「……何事にも例外はある」
詰め寄るミーナに、カルヴァンは続けた。
「ネルは俺様がそれを止めるのであれば、自殺するとまで宣言した。寿命を削る行為を見過ごすのは契約に反するが、それが最善の方法であれば、俺様には反対することができん」
ミーナは言葉に詰まりながらも、自分の瞳に涙が浮かぶのを止められなかった。
私はネル姉さんと一緒に生きていたかった。
この幸せな国で、ずっと一緒に生きていけると思っていた。
もう嫌なことは起きないと――ただ馬鹿みたいに、ネル姉さんの言葉を信じていた。
「私はなんて、大馬鹿なの?」
ネル姉さんは代償を支払っていたのに、私はそれに、ただ甘えていただけだった。
「……以前、悠久の魔女様を蘇らせる方法があると言ったのは本当ですよね?」
ミーナの視線に、カルヴァンはうなずく。
「あの小僧の観測者としての力を利用し、それに似合うだけの生贄を用意すればな?」
「……どれだけの生贄が必要なのですか?」
「百万人だ」
「そ、そんなに多くの人々を?」
眉を寄せるミーナに、カルヴァンは笑う。
「安心しろ。都合の良い生贄がミーナにはおるではないか? 悠久の魔女の残した登録書を利用すれば、そのまま生贄にすることも容易いハズだ」
カルヴァンの考えていることに気づいてぞっとする。
「こ、この国の民を……生贄に?」
「俺様はミーナが〝姉を助ける〟ためならば、手段を択ばぬ」
カルヴァンの言葉に、鼓動が早くなる。
「力を貸してやる」
私は――
「ミーナは、姉を助けたいのだろう?」
こうして、ミーナは全て捨ててでも、悠久の魔女を蘇らせることに決めた。
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