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 悠久の魔女が亡くなった翌日、二人の人間がお屋敷に訪れた。


 二人は悠久の魔女と同じ転生者で、どちらもが悠久の魔女のように願いの力を持っていた。


 頼りなさそうなシュウさんは〝この世界の歴史を知る力〟を持ち、自信満々な女神であるタルサさんは〝この世界のことを知る力〟を持つらしい。


 タルサさんは悠久の魔女様が亡くなった後にも、率先してエターナルの国を発展させるように尽力してくれたし……心優しいシュウさんも、稽古の合間に家事を手伝ってくれた。


 そんな日々は居心地が良かったが、ミーナはある問いをタルサに聞くことにした。


 それは、ずっと気になっていたが、カルヴァンに生贄を捧げることができずに知ることができなかった一つの問い。


 悠久の魔女様は、なぜ命を落としたのか?


 悠久の魔女様が逝ってから、ミーナにはずっと不思議だった。


 未来視を持つ悠久の魔女様が、自分の死ぬ未来を見通せないとは思えなかったし、現に遺書のことを考えるなら、悠久の魔女様は自らの死を予見していたように思う。


 遺体には外傷もなく、死に至るような病を患っていた様子も自分が気づかないとは思えない。


 悠久の魔女様の死因について聞くと、タルサさんはため息をついた。


「どうしても、知りたいか?」


 歯切れの悪いタルサさんを見て、少しだけ躊躇したけれど、


「カルヴァンに生贄を捧げてでも、私はそれを調べます」


 断言するミーナに、タルサは頭をかきながら答える。


「悠久の魔女殿の死因は、寿命じゃよ」


「そんな……だって、悠久の魔女様は――」


「エルフが普通に生きていれば、八百までは優に生きられると言いたいのじゃろ?」


 言葉の先を越されてうなずくミーナに、タルサはため息をついた。


「つまり、悠久の魔女殿は普通ではなかったのじゃ。そもそも、ミーナ殿は転生者ではない故に理解しづらいかも知れぬが〝願い〟とは魔力を消費する。それは妾のようにシンプルな〝願い〟であっても上級魔術よりも遥かに多い消費量じゃし、曖昧で強力な〝願い〟になればなるほど、魔力の燃費は悪くなる」


「でも、悠久の魔女様は、そんなことは――」


 ミーナは悠久の魔女とずっと行動を共にしていたが〝願い〟を使う時に膨大な魔力が必要なんてことは、一度も聞いたことがない。


 集めた魔力だって、国を大きくすることにばかりに悠久の魔女は使っていた。


「変えるという〝願い〟は強力であるが故に、その消費魔力は膨大じゃ。悠久の魔女殿はそれを賄うために、ある代償を払っておった」


「……」


 悠久の魔女様は、願いを叶えるために、何かを犠牲にしていた?


 話の流れから、嫌な予感がする。


 ミーナの不安を前に、タルサは渋々といった様子で口を開いた。


「悠久の魔女殿は、自らの寿命を魔力に〝変える〟ことで〝願い〟を叶えておった」


「そ、そんな……」


 自分のために、悠久の魔女様が命を削っていたなんて。


 取り乱すミーナに、タルサは目を伏せる。


「悠久の魔女殿はミーナ殿に心配をかけず、ミーナ殿が平和に生きて行ける様に――この国を創ったのじゃ。その願い無駄にするような選択をするべきではいと、妾は思うぞ?」

 

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