俺と国家反逆罪
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馬車がミッヘルン監獄に着くと、俺とアリシアは武装したリザードマンたちに引き渡された。
「お二人はまだ容疑者であるため、手荒に扱うことはしないでくださいね」
「……悠久の魔女様が容疑者を捕まえるなんて珍しいですね?」
リーダー格のリザードマンは疑問を口にしていたが、ミーナさんはうなずく。
「悠久の魔女様は別件で忙しいのです。どちらにしても明日には結果をお知らせしますから、それまでしっかりと監視をお願いします」
「わかりました」
敬礼を返すリザードマンと別れ、ミーナさんは馬車に乗って帰ってしまう。
それを横目に、俺は護身用の剣を没収され、アリシアと監獄の中へと促された。
俺たちが通されたのは収容所の地下にある牢獄で、窓すらないそこは暗くジメジメとしており、壁に取り付けられた蝋燭の明かりだけが心もとなく揺れている。
地下には石造りの牢が六室ほど並んでいたが、全て空の様だった。
俺たちは抵抗することもできず、別々の牢にぶちこまれた。
鉄格子の向こう側で鍵をかけながら、リザードマンが口を開く。
「国家反逆罪って、お前ら何したんだ?」
俺が「何もしてないさ」と素直に答えるがリザードマンは笑った。
「悠久の魔女様が決定的な物証もなく捕まえるなんて異例だし、詳細すら知らされないなんて奴、お前たちが初めてだぞ? 悠久の魔女様にかかれば、ここに来る奴は有罪の悪人だけだから――正直にいって興味があるんだよな」
意外と話を聞いてくれるのかも知れない。
俺がそう思って口を開こうとしたが、
「この手枷を外して頂戴っ!! 私たちは、ここにいるような暇はないのよ!」
感情的になったアリシアに割り込まれてしまった。
「おいおい……こっちはアリシア主教サマか? ますます怪しいな、お前ら?」
「私たちは無実よ!?」
アリシアは訴えるが、
「それを決めるのは俺じゃねぇ」
リザードマンの表情は崩れない。
「そもそも俺みたいな下っ端が命令に逆らう訳にはいかねぇし、本当に無実なら、すぐに悠久の魔女様が証明してくださるさ。悠久の魔女様は、絶えず民を見るって奴よ。だから、一日ぐらいここで過ごしてくれや」
リザードマンはそれだけ言って、地下の入り口へと帰って行ってしまった。
「どうしてこんなことに……」
隣の牢からアリシアのつぶやきが聞こえ、俺は何かできないかと辺りを見渡す。
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