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アリシアが口を開いていた。
「私たち信者が必死に魔力を集め続けたのは、それがこの国の未来に繋がると信じていたからなのよ? 悠久の魔女様は、最初から私たちを生贄にするために集めたっていうの? 嘘よ。そんなの――私たち信者の想いは、どうなるっていうの?」
「本当の信者であれば、悠久の魔女様のために喜んで死ねるハズです」
ミーナさんは目を合わせず、うつむきながら続ける。
「なぜなら、自分の命を対価に、悠久の魔女様を蘇らせることができるんですよ? それよりも素晴らしいことなど、この世にあるハズがありません」
俺には、そんなミーナさんの仕草が不自然に思えた。
なぜなら、
「……本気でそう思っているなら、もっと自信満々に言えるハズですよね?」
俺の問いに、ミーナさんが顔を上げる。
「ミーナさんは、そうやって自分に言い聞かせつつも――それが間違っているって気づいているんですよね? この国の民を犠牲にすることなんて許されないって、本当は――」
「間違っていることぐらい、承知の上ですっ!!」
「……なら」
「だからこそ、ですよ」
ミーナの瞳に、強い意志が宿る。
「私は絶対に悠久の魔女様を蘇らせてみせます! 私はそのためなら、邪魔をするお二人を騙して捕まえることだって平気でする人間なんです! 私を説得するのは、もう諦めてください。……お、お願いします」
「……」
俺はその答えに、何と答えれば良いのか分からなかった。
ミーナさんは間違っている。
しかし、あえて間違えてでも、悠久の魔女を取り戻したいんだ。
その気持ちは――タルサを失いそうになった俺にだって、理解できるだけに歯がゆい。
どう伝えれば、俺はミーナさんを止めれる?
「お二人には、本当にお世話になりました」
深く頭を下げるミーナさんに眉を寄せる。
ミーナさんが何を伝えたいのか、まるで分からない。
「タルサさんの気持ちも本物で、私はこの国を変えようとする皆さんに、本当に申し訳ないとも思っています。しかし、私はそんなお二人を裏切ってでも、悠久の魔女様にもう一度お仕えしたいのです」
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