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 アリシアが顔を上げ、ミーナさんへと口を開く。


「国民を増やすのが難しいのはよく理解したわ。でもね? 私はそれを踏まえてでも――もっと多くの人をこの国へ受け入れたいの。悠久の魔女様が奴隷を買い取って国を豊かにしていたのは事実だけれど、私たちは自分から悠久の魔女様のために祈っているのよ! その信念は変わらないし――私たちのように、敬虔な信者になれる人たちは、必ず他にもいるわ!」


 アリシアの力強い瞳に、ミーナさんは顔を強張らせていた。


 そんな二人の前で、タルサだけが薄く笑みを零している。


「難しさ、のぅ?」


「……何が言いたいんだよ?」


 タルサの真意が理解できず、俺は疑問を口にしていた。


 そんな俺に、タルサはため息交じりに口を開く。


「人間の資質を見定めるのは、まず不可能じゃ」


 タルサは目を細め続ける。


「現状でいかに真面目な人間であろうと、未来では腐ることもあるわけじゃからな? しかし、それは逆も然りじゃ。傍若無人のリザードマンが人を守りたいと改心し医者になりたいと願うこともあれば、スパイ活動のために潜り込んだ獣人が心を動かされ本気で敵国に尽くそうとすることもある。また、全てに絶望した小人族が、救いの手を差し伸べられて恩義を感じ――他の者も救いたいと想うことが間違っておるとは思わぬ」


「ですが――」


 ミーナさんが反論しようと口を開くが、タルサはそれを手で制した。


「この問いに正解はないのじゃ。妾はアリシア殿が移民や奴隷を受け入れたいという気持ちも理解できるが、それはミーナ殿が拒否したいという気持ちも同じじゃよ」


「……なら、どうするのよ?」


 アリシアの問いに、タルサはニヤリと笑った。


「アリシア殿も悠久の魔女殿の大役代わりに苦労しておる。今日も妾たちに相談を持ち掛けておるが、自分から推薦できるような優秀な移民を待機させておるのじゃろ?」


「……やっぱりタルサにはバレてしまうわよね? でも、それを知ってどうするつもりよ?」


 タルサが不敵に笑い、ミーナさんに向かって改めて口を開く。


「移民の受け入れであれば、奴隷のように他国に金銭を払う必要もない。良い民であると確信が持てる者の受け入れであれば、エターナルにとってプラスでしかなかろう?」


 タルサの問いにミーナさんは躊躇しているが、反論はできないようだった。


「それに、これも経験じゃ」

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