154


 タルサと廊下で別れ、自室に戻ろうとして、俺はトイレに行きたくなった。


 先ほど釘を刺されたところなのに不用心かなと思いながら廊下を戻ると、廊下に並ぶ一室に入っていくタルサの後ろ姿が見えた。


 今日は夜遅くまで話し合ったこともあり、俺達だけでなく、ロウとヘッドも泊っている。


 あの部屋は確か、ロウが泊っている部屋だった気がする。


 ……タルサは、何かロウに用事だろうか?


 時間や見た目だけなら浮気に見えなくもないけれど、その心配は皆無だった。


 タルサは言わずもがなだし、ロウにも両想いの相手がいるのだ。


 ロウはあの後も、ウサギの獣人であるメイさんとよろしくやっているのだろうか?


 つまり、タルサはまた何か悪だくみでもしているのだろう。


 ……あえて隠しているっぽいし、俺はタルサを信用している。


 タルサが俺に知らせないということは、それこそがタルサにとっての最善ということだ。


 それなら、俺はタルサを信じて、何も見なかったことにしようと決めた。


 気にならないといえば嘘になる。


 でも、俺には俺の、タルサにはタルサの、やるべきことがあるはずだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る