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「わ、悪い冗談はやめなさいよ!?」
思わずアリシアが立ち上がるが、対してロウはヘッドに目配せしていた。
ヘッドが無言でうなずくと、ロウはそれで全てを察したのだろう。
そんなやりとりを見ていたアリシアが、それでも声を荒げる。
「そんな――なら、私たちは……これからどうやって――何のために生きて行けっていうの?」
アリシアの強気の姿勢が、初めて崩れた。
瞬間的にアリシアの瞳に涙がたまっていく。
「……アリシア殿の混乱も無理はない」
タルサがゆっくりと口を開く。
「このエターナルにおいて、悠久の魔女殿の存在は正に神そのものじゃ。その信仰が厚ければ厚いほど――この事実を公にすれば、暴動や反乱が起き、国そのものが空中分解する未来も考えられる。故に、この情報は国家機密として扱い、誰にも悟らせるわけにはいかぬ。それをまずはアリシア殿に理解していただきたい」
タルサの言葉に、アリシアが顔を上げる。
「でも、そんな――私たちは悠久の魔女様のために……悠久の魔女様だからこそ、私たちはここまで来れたのよ? 悠久の魔女様がいないのであれば、もう、この国は――」
「アリシア殿は、悠久の魔女様の創り上げたこの国を、守りたいとは思わぬか?」
アリシアに見つめられながら、タルサは言葉を続ける。
「妾はこの国が好きじゃ。アリシア殿はどうじゃ?」
ミーナを説得した時と同じように、タルサはアリシアに問いかける。
「わ、私だって――この国が好きよ。その気持ちなら、誰にも負けないっ!」
「……ならば、妾たちは友になれるハズじゃ」
タルサは、まっすぐアリシアへ笑いかけた。
「悠久の魔女様の国を存続させるために――妾たちに力を貸してはくれぬか?」
「……仕方ないわね」
逡巡の果てに、アリシアはうなずいてくれた。
「でも、条件があるわ。あなたたちが私を合格だと思っていても――私はあなたたちを合格とは思ってないんだからね? そのつもりで必死に働きなさい!」
一筋縄ではいかないアリシアに、タルサは笑みを浮かべる。
「人を見定めるということは、妾たちも見定められておるということらしいな?」
タルサが俺に目配せしてくる。
俺はその言葉に少しだけ焦った。
なぜなら、俺は先ほどから、ずっと口を挟んでいない。
この場で俺にできることなんて何もないと思うし、俺はとても無力だ。
俺はこのまま、何もしないでいて良いのだろうか?
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