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 顔を上げると、申し訳なさそうなシュウさんと目が合う。


 瞬間的にほおと体が火照ほてるのを感じる。


 前かがみになって強調されている胸と、あらわになったふとももと、二の腕に汗をかいていることに気づき、じわりと涙が浮かんだ。


(どういうことだ……? メイド服がタオルに変わっただと?)


 不意にカルヴァンの声が届いて、私は頭の中で叫ぶ。


 私が聞きたいんですけど!? なんで私は丸裸をさらしているんですかっ!?


(……俺様にもわからぬ。俺様の幻術が現実へと姿を変えたというのか? しかし、魔力の発動した痕跡もなく、このような芸当ができるハズが――いや、この現象が魔術でないとするなら、これは、これこそが……この小僧の願いの正体? だが、願いであっても魔力の消費は起こる。どういうことだ?)


 聞きたいのは私ですよっ!!


 そもそも、私は冷静な状況分析をしてほしいと頼んだわけではない。


 私が欲しいのは、ただひとつ。


 そう、メイド服だっ!


「……だ、大丈夫ですか?」


 想定外のトラブルに頭が追い付かない私を、シュウさんが気遣ってくれていた。


 先ほどよりも顔が近づいて、私は飛び退くように立ち上がる。


 これ以上、この姿を見られるわけにはいかない!


 お、お嫁に、行けなくなってしまう!


「よ、用事を思い出しましたっ!」


「へ?」


「最後までお身体をお洗いできずにすみません!! じ、実は、タルサさんがデザートを食べたいと言われていたのを忘れていて――すぐに戻ろうと思います! 本当にすみませんでしたっ! ご無礼ぶれいをお許しくださいっ!!」


 慌てて頭を下げると――さらに、大変なことが起きた。


 パサリと、何か布のようなモノの落下音が聞こえた。


 恐る恐る目を開くと、私の体に巻いてあったはずのタオルが――床に落ちている。


 シュウさんと、目が合った。


「……」


「……」


 全てを、見られてしまった。


「し、失礼しましたぁあああああああああああっっっ!!」


 私は胸を抱いて、脱兎だっとごとく風呂場を後にした。

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