俺とお風呂
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豪華な夕食を終え、俺は風呂場に向かっていた。
今日は稽古で汗をかいたし、この立派なお屋敷の風呂がどんな感じか楽しみだ。
俺の口からは自然と鼻歌すら漏れていて、それだけ環境に恵まれているのだと気づく。
俺の稽古を受けた中庭は、背の高いお屋敷の影になっていて、また山頂にあるため風も吹いていて涼しかった。もちろん、メリッサさんの人柄だって清々しいと思える要因だろう。
さらに言えば、この豪華なお屋敷が、今日から俺たちの宿代わりだ。
ミーナさんの作る料理は本当に絶品だし、ここに住めるだけでもかなり恵まれている。
……しかし、問題が無いわけではない。
黒い腕や天使たちの動向が気にならないハズはなかったし、タルサが生きていると黒い腕に知られたら、俺たちはまた襲われるだろう。そもそも、この国は崩壊の危機に直面しているのだから、もっと気を引き締めなければいけない。
俺はそんなことを考えながら、脱衣所で裸になって風呂場へと足を踏み入れた。
俺の前に現れたのは、高級ホテルも顔負けの大浴場だった。
掃除も行き届いているし、ミーナさんのメイド力の高さを窺わせる。
とりあえずかけ湯をしてみれば、その温度も申し分ない。
そんな湯を前に、俺は申し訳なさも感じた。
夕食もそうだが、ミーナさんは一人でこのお屋敷を管理しているのだ。
四人分の料理を用意する時点で大変だろうし、それに加えて、こんな立派な風呂を準備するのに、どれだけ時間がかかるのか見当もつかない。
俺はタルサのように政策では力になれないし、ただの
体を洗うために改めて桶を手に取った時、脱衣所から扉の開く音が聞こえた。
「あの、シュウさん?」
「……ッ!?」
俺は振り返りながら、慌てて股間を桶で隠した。
噂をすれば影、という奴かも知れない。
俺の目の前には――タオルだけを巻いて、裸同然のミーナさんがいた。
細長い耳をピンと伸ばすその顔は、目が大きく、すっきりと整っている。飾り気のない黒い短髪も、むしろ
そんな人が、素肌にタオルだけを巻いた格好なのだからたまらなかった。
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