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 タルサは足を組み替え、改めて口を開く。


「これより悠久の魔女殿が亡くなった事実は国家機密として扱う。その機密を死んでも守れるとヘッド殿が信頼できる人物を、最低でも三人は集めてくださらぬか?」


「……もっと具体的な条件は?」


 ヘッドは眉を寄せているが、断らない辺り目星はついているのかも知れない。


「ヘッド殿であれば言わずもがな――じゃが、仮にも神への依頼じゃからな? 明言するのは大切やも知れぬ」


 タルサは目を細めた。


「条件は三つじゃ。一つ、悠久の魔女殿への恩義おんぎに厚く愛国心のある人物であること。二つ、ヘッド殿が背後を任せても良いと思うほど信頼に足る人物であること。三つ、人の上に立つ才のある人物であること」


 ヘッドは腕を組んで考え始める。


「集められそうかの?」


 タルサの問いに、ヘッドは言葉を選びながら答える。


「……それを答える前に、一番大事なことを確認したい」


「何が聞きたいのか見当もつかんな?」


 はぐらかすようなタルサの言葉に、ヘッドはひかえめに口を開く。


「この仕事の報酬は?」


「そんな回りくどい言い方をせずとも、わらわが信じられぬのであれば、その真意を答えてやる」


 タルサは腕を組み、ふんぞり返った。


「エターナルは悠久の魔女殿のワンマン国家じゃった。ここから妾がその後を引き継ぐが――それはこの国が軌道に乗るまでじゃ。国の再編に関わる者には、それ相応の地位を約束しよう。この国は最初から、ミーナ殿とお主達の国じゃからな?」


 真剣にタルサを見つめていたヘッドだったが、やれやれと首を振る。


「……ここまでベラベラ喋ってるくせに嘘がねぇとは、本当にふざけた奴だ」


「働き次第では追加報酬も出そう。一国の予算がそのまま妾たちの手にはあるのじゃから、時間を貰えるのであれば前金もはずむぞ?」


「いや、そこまでは必要ない」


 ヘッドはタルサの言葉を手で制し、


「信頼に足る相手ってのは、用心深いもんだ。俺が直接声をかけなきゃ説得も難しいし、三日はかかるが、信頼できる奴を連れてきてやるよ」


「それは助かる――のじゃが、もう一つだけ妾の願いを聞いてもらいたい」


「……なんだよ?」


「その三日間、妾にメリッサ殿を貸しては貰えぬか?」


「わ、私か!?」


 話が飛び火するとは思っていなかったのだろう。


 頓狂とんきょうな声を上げたメリッサさんを見ながら、タルサは不敵に笑う。


 それを見て、ヘッドの目が鋭くなった。


「人質のつもりか?」


 タルサはそれを笑い飛ばして、


「そんな意図いとは一割しか無いから安心せよ」


 一割はあるのかよ。


 横でそう思っていた俺に、何故なぜかタルサは視線を向けた。


「こっちは子守りみたいな仕事じゃから、そこまで気負いせずとも良い。しかも、こっちの仕事には子守りの百倍ほどの報酬も用意してやるし、メリッサ殿にも悪い話ではないぞ?」


 ……どういう意味だろう?


 俺にタルサの言葉は理解できなかったけれど、どことなく嫌な予感がした。

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