タルサと仕事の依頼

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「もう話は終わったのか?」


 馬車に戻ると、ヘッドがこちらに声をかけてくれた。


わらわたちはこれから、悠久の魔女殿のお屋敷で暮らすことになった」


 それは予想外の台詞せりふだったらしく、ヘッドが眉を寄せている。


 そんなヘッドに、タルサはニヤリと笑った。


「そこで、ヘッド殿の力を見込んで新たな仕事を頼みたい」


 その詳細を話すと言い、俺とタルサ、ヘッドとメリッサさんの四人で馬車に乗り込む。


 四人で向かい合ったところで、ヘッドが改めて口を開いた。


「……それはつまり、悠久の魔女様絡みの仕事ってことか?」


 ヘッドの目線を受け、タルサが満足そうにうなずく。




「実は妾たちがうかがう前に、悠久の魔女殿は亡くなっておった」




 その言葉に、ヘッドとメリッサさんの目が驚きに開かれた。


「そ、そんな……嘘だよな?」


 メリッサさんが狼狽ろうばいしてヘッドを見つめるが――ヘッドは目を細め、首を横に振る。


「タルサさんは、嘘をついてねぇ」


 ヘッドには、嘘を見抜く〝願い〟の力がある。


 だから、タルサの言葉は、二人の信用に値する言葉に成り得てしまう。


「こ、これから……私たちは、どうすりゃいいんだよ?」


 メリッサさんの戸惑とまどいとは対照的に、タルサは薄く笑ったままだ。


「妾たちはこの情報を、全ての者に隠そうと考えておる」


「……この国を守るためには、それしか方法はねぇだろうな」


 淡々と語るタルサに、ヘッドがうなずく。


「近隣諸国どころか、この国の根幹こんかんを揺るがす事態だ。この国にはろくな軍隊もいやしねぇし、その情報が漏れただけでも致命傷だろうな。……だが、そう簡単に隠し通せるモンなのか?」


「やはり、ヘッド殿は話が早くて助かるのぅ?」


 ヘッドの疑いの視線を、タルサはどこ吹く風のように受け流す。


「妾はこの国が好きじゃ。この動乱どうらんの世において、これほど異種族が入り乱れておるにも関わらずに平穏を保つこの国を、みすみす捨ててしまうことは勿体ないと考えておる。故にできる限りこの国を守りたい。……いや、これでは言葉が足らぬな?」


 タルサはヘッドを真っすぐに見つめて、さも楽しそうに口を曲げた。


「妾と共に、この国を守ってほしい」


 挑発的なその言葉に、ヘッドも笑い返していた。


 その表情を見れば、タルサの言葉に〝嘘が無い〟ということにヘッドが気づいているのが伝わってくる。


「で、そのための仕事って何だ?」


「ずばり、妾たちには信頼できる手駒が必要じゃ」

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