私は転生した

88


 私たちと〝新人類〟の直接的な戦いが始まった。


 私たちの先陣を切るのはいつもタルサだったし、誰よりも日本のため――いや、私たち仲間のために命をかけてくれていたのもタルサだった。


 タルサは戦いが始まる頃には、自らのことを女神と名乗っていた。


 自らを〝神である〟と名乗るのは、自国民から祈られることによって精神エネルギーを譲渡じょうとしてもらうためだ。タルサは集めた精神エネルギーによって〝新人類〟を何度も撃退し、快進撃を続けたが、戦闘を続けるにあたり、こちらの被害ひがいも広がっていく。


 そして、その悲劇が起こるのは、時間の問題だったのだと思う。


 私の腕の中のタルサは満身創痍まんしんそういで、血を流し横腹が赤く染まっていた。


わらわは、もうじき死ぬ」


 言葉と裏腹にタルサの笑顔は相変わらずで、私は動揺どうようを隠せない。


「最後に頼みがある」


「最後なんて……何を言ってるのよ?」


由緒ゆいしょ正しき魔術師の家系が、強力な魔術師を後世に残せる理由は――先代の魂を跡継ぎがらい、魂ごと精神エネルギーを継いでいくからじゃ。そして、そのために魔導士の家系には魂を転生させずに現世へと残す呪いがかけられる。妾は自らの子孫に転生の機会を奪うごうになわせずに済むように、日本へ逃げてきたのじゃ」


「……そうじゃない」


 私の言葉に、タルサは眉を寄せた。


「そっちこそ、何の話じゃ?」


「私たちにはタルサが必要なのよ。なんで私をかばって死ぬのよ。馬鹿じゃないの?」


「くっくっくっく」


 にらむ私の前で、なぜかタルサは笑っていた。


「何がおかしいのよ!?」


「妾の目に狂いはなかった。お主様は、力の使い方を間違えたりはせぬ」


「……」


「妾が死ぬとき、一族の呪いにより妾の魂は転生せず、精神エネルギーへと分解される。妾の魂を喰らえば、お主様なら勝てるハズじゃ」


 タルサは私をまっすぐに見つめて口を開く。


「妾の力を、お主様にこそ使ってほしい」

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