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「……
「そんなこと言うな!」
「……これから、どうするつもりじゃ?」
「病人は医者に診てもらうに決まってんだろ!」
俺はタルサを背負って夜の道を歩いていた。
俺はお
タルサを背負いながら歩くが、足はよろけるし息も上がる。
「……どうしてなんだ?」
俺は、分からなくて、悔しくて、どうしようもなかった。
「どうして、俺なんかのために死ぬんだ? タルサは生き返りたいって言ってただろ? どうして真逆のことをしてんだよ。俺は、タルサが――タルサのために生きてくれるなら、それなら別れたって構わなかったのに。こんなの、このまま死ぬなんて、俺は許さないからな!」
「くくくくく」
タルサは俺の背中で、笑っていた。
タルサの吐息を、背中で感じる。
「異世界といえども、人生とはうまくいかないものじゃな」
「……なんの話だ?」
「妾はあの黒い腕に、心の底から嫌われておるらしい。お主様に知られずに逝くつもりじゃったが、妾がそうやって逝こうとすることすら、あの黒い腕は許さなかった。奴は助けるという名目なら、あの取引があってもお主様に近づけたと言う訳じゃ。してやられたわい」
「……タルサを助ける方法は、本当にないのかよ?」
「妾の知る限りは、存在せぬ」
タルサは願いによって、この世界で誰よりも〝知って〟いる。
そのタルサが知らないという事実に、現状がどれだけ絶望的なのか思い知らされる。
ようやく目的の建物に着き、俺はドアを乱暴にノックした。
「開けてくれ! 頼むっ!!」
俺の願いが通じたのか、玄関に明かりが灯る。
「ウチは夜間に診察はやってねぇ――って、お前か」
扉の前で、パジャマ姿のリザードマン、ロウが目を丸くしていた。
「……診てくれませんか?」
「早く入れ」
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