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「待て!」


 俺は少女を追って走った。


 少女は扉を抜け、廊下を突き進んで宿屋から外に出ていく。


 俺も同じように扉を抜ける。


 すでに日は落ちており、街灯の少ない道は薄暗く肌寒い。


 視界の悪さから少女を見失うかと思ったが、それは杞憂きゆうだった。


 追いかけて曲がった道の先で、少女が立ち止まっている。


 その少女の行く手をはばむように、見覚えのある青い髪の青年が立っていた。


「コロナさん!?」


 コロナは俺を一瞥いちべつして答える。


「こいつを誘き出してくれてありがとう」


「……邪魔じゃまをするなら、殺しちゃうよ?」


 少女が小首をかしげ、ボロ布の下から右腕を突き出した。


 少女の腕は一瞬で伸び、二メートルはあったコロナまでの距離を詰める。


 コロナはそのまま、少女の伸びた腕に――胸をつらぬかれてしまった。


 石畳がコロナの鮮血せんけつにまみれていく。


「――ひひひひひひひ」


 その笑い声は、少女の腕から発せられていた。


 少女の腕は黒く染まり、無数の口が生え、うごめいている。


「――久しぶりだなぁ創造神よ。――創造神の力を消し去るためにこんな所まで来たが、五百六十七番コロナとも出会えたのは幸運だ。――神に逆らうなどお前たち天使には不可能だ! ――無様に死に様をさらしに来るとは滑稽こっけいだ!」


「いいえ、滑稽なのはあなたです」


 腕が胸を貫いたままにも関わらず、コロナが口を開いていた。


「ここであなたを殺します」


 コロナが腕を伸ばすと、その手に一本のランスが生成された。


 コロナはそれを振りかざし、黒い腕に突き刺す。


 黒い腕は突き刺された箇所で切断され、ぼとりと落ちた。


 コロナは地面にのたうち回っている腕を踏みつけ、そのままランスで串刺くしざしにする。


「――心臓を潰したんだぞ? ――普通なら即死だ。――なぜ立っていられる?」


 黒い腕は地面に貼り付けにされているが、それでも口々に喋り続けている。


「拡大解釈でしょ?」


 答えたのは少女だった。

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