私とタルサ
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発見から八年の月日が流れ、精神エネルギー産業は爆発的に発展していた。
精神エネルギーの実用化により、日本のエネルギー問題は収束に向かいつつある。
精神エネルギーは熱エネルギーに変換可能で、火力発電の応用による効率化が図られた現状において、資源も国内で確保でき、環境にやさしい新時代のエネルギーであると日本人に受け入れられた。原子力発電の撤退を思案していた日本にとって、それは渡りに船でもあったのだ。
日本政府はさらに精神エネルギー発電に注力していくこととなる。
私が高校二年生になったその年、私の学校で日本政府によって魔力測定調査が行われた。
精神エネルギーとは脳の働きから生まれるエネルギーであり、年配者よりも若者に適性があるという結果を加味した結果、対象者は高校生となった。全国的な実地の前段階として、首都にある我が校がテスト採用されたらしい。
受けた側の印象としては、学力測定や体力測定と同じような
聴力検査で使うようなヘッドホン型の装置を装着し、対象者の脳波を調べる。
その際、様々な考える脳内刺激が高ければ高いほどに精神エネルギーを外部に供給できるという理由から、私は彼の小説を読みながら測定を受けた。
一人の調査は十分ほどで終わる。
彼の小説を読み返すのは、もう三度目だった。
検査をうけていたからだろうか?
いつものように物語に集中できず、午後の授業もめんどくさいな、なんて考えていたものだから、検査官さんの声に驚いた。
「すごい才能だ」
私は校内どころか、国内で最も精神エネルギーを生み出す才能があった、らしい。
適正のある者は精神エネルギー発電施設での労働を
そんな人たちを、魔法の使える者として〝魔法使い〟と、人々は呼んだ。
そんな呼び名に反して、労働内容は至ってシンプルだ。
魔法使いたちは、一日八時間ほど機械につながれ、自らのエネルギーを供給する。
労働という言葉のくせに、その時間を過ごす方法は自由だ。
魔法使いたちは、テレビを見ていてもいいし、本を読んでいてもいいし、ゲームをしていてもいい。話によると運動したいと申し出てランニングマシンを持ち込んだ人もいるらしい。
適性が無ければ出来ない仕事というためか、はたまた国家プロジェクトだからなのか、大卒新入社員の三倍ほどの賃金が支払われると説明を受けた。
夢やなりたい職業も無かった私は、そのまま精神エネルギー発電所へ入社した。
そして、精神エネルギー発電所への初出社の日。
私は真新しいスーツを着て、最寄り駅からバスに乗った所で声をかけられた。
「お主も魔法使いなんじゃろ?」
彼女は私と同じ金髪でスーツを着ていたが、ニヤリと笑う顔は自信に満ちていた。
「妾はタルサメシアじゃ。タルサと呼ぶがよい」
それが、私とタルサとの出会いだった。
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