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「タルサは生き返るために、天使の仲間になるってことか?」


「……わらわは、どうしても生き返らねばならぬ」


 タルサの真剣な表情を見て、納得した。


 タルサには、タルサの目的があるんだ。


「なら、仕方ないよな?」


 俺は馬鹿みたいに、へらへらと笑っていた。


「お主様?」


「やらなきゃいけない理由があるんだろ? なら、俺なんか気にせず早く行ったほうがいい」


「……すまぬ」


「謝る必要なんてないさ。今まで楽しかったぜ?」


「妾も、楽しかった」


 タルサは足元に魔方陣を生み出し、空へ浮かんだ。


「ありがとな」


 俺の言葉に、タルサは薄く笑う。


「……次に会った時は、敵同士かも知れんぞ?」


「そんなの関係ねぇよ。俺はタルサに感謝してる。異世界でのかせぎ方だって教えて貰ったし、できるだけやってみるよ」


 タルサは今更になって、いつものようにニヤリと笑った。


「さらばじゃ!」


 タルサは言うや否や、空の彼方かなたへと飛び去って行った。


 またたく間に小さくなっていくタルサの後姿を眺めながら、俺は頭をかく。


 タルサを失った俺は、この世界では最下位の無能力者でしかない。手にあるのはノートパソコンと、タルサからもらった金だけ。これを元手に、俺は一人で生きていかなきゃならない。でも、俺はそこまで悲観的に考えていなかった。


 だって、それは、現状がそうであるにすぎないからだ。


 力が足りないなら、それこそタルサを振り向かせられる男になって、タルサをむかえに行く。


 いつか必ず、タルサを迎えに行ける男になってやる。


 ……タルサが生き返るよりも早く迎えに行きたいが、間に合うだろうか?


 つまり、遊んでる時間はない。


「まずは魔力を集めるとこから、だな?」


 俺は一人で、神ランキング協会へ行くことにした。

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