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 俺の飲みっぷりに、狼男さんは笑う。


「俺の力が間違ったって言いてぇのか? んな訳ねぇだろ! いいか? アイツは兄ちゃんが好きだ。もう離れたくねぇって心の底から思ってやがった! どんな理由かわからねぇけどよ? つまり、アイツは兄ちゃんに嘘でもついたんじゃねぇのか?」


「……」


 その可能性は、考えていなかった。


 でも、昨日の昼間までのタルサは、俺の書き込みによって本気で俺のことが好きだったんだから、その時の気持ちが狼男さんにとって本物に見えても問題ない気がする。でも、それは願いの力も凌駕りょうがするんだろうか? どっちが本物で、本当になるんだ?


 ダメだ。


 頭がこんがらがってきた。


「どちらにしろ、兄ちゃんはアイツに惚れてやがる!」


「いや、だから俺は――」


「いいから認めちまえ! いいかぁ? 兄ちゃんは遠慮してる場合じゃねぇんだよ! 惚れた女を逃がすほど馬鹿なことはねぇ。それこそ捕まえられなきゃ生きる意味なんてねぇだろ?」


 狼男さんは、吠えるように叫ぶ。




「俺は誰よりもぉ、メリッサを愛してるぜぇええええええええっ!!」




「なっ、何を叫んでんだ馬鹿っ!!」


 狼男さんは、背後にいた女騎士さんに後頭部をぶん殴られた。


 顔を染める女騎士さんは、テーブルに突っ伏した狼男さんにつかみかかる。


「こんなところで告白してんじゃねーぞっ! 私の方がテメェを好きなんだよ馬鹿野郎が!」


「うるせぇ! 俺はお前が好きなんだ! 好きで悪いか、ちくしょーがっ!」


 メリッサとは、女騎士さんの名前だったらしい。


うらやましいのか羨ましくねぇのか分からねぇ夫婦だなぁ!」


「毎日ノロケてんじゃねーぞっ!」


「まったく見せつけやがってふざけんな!」


 告白しながら殴り合う二人を、他ののんべえ達が羽交はがめにしていく。


 のんべえ達に押さえつけられながら、狼男さんは盛大に笑っていた。


「俺はイケメンで、それを利用してメリッサを手に入れた! 今だって兄ちゃんをダシにしてメリッサとの距離をさらに縮めてやったぜ! ――だが、それの何が悪い!? それが本気ってことだろ? 後悔するぐらいなら、出来ることは全部やりゃーいいんだっ!」


 狼男さんの呂律ろれつはだんだんと怪しくなり、酔いも極まってきている。


 でも、そんな狼男さんをカッコイイと思ってしまった。


 俺はこの異世界でやりたいことなんてなかった。


 でも、俺のやりたいことが、ようやく分かったのかもしれない。

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