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「せ、正解でしたので、上層部にかけあってみます。結果はまた後日お知らせいたしますね!」
顔を染めたまま、コメットさんは受付の奥へと逃げてしまった。
……あれでコメットさんの
何はともあれ、これで俺が無能力者ではないのは確かだろう。
俺は少しの充実感とともに席に着く。
そんな俺の前に、どんと音を鳴らしてビール入りのジョッキが置かれた。
「これは俺からの差し入れだ!」
顔を上げると、狼男さんが親指を立てていた。
「いいんですか?」
「黒パンを当てて
狼男さんは俺の隣の席に座る。
ガハハと景気よく笑う狼男さんにお礼を言って、ジョッキに口をつけた。
ぷはーっ、やっべぇ美味い。
現実世界のビールもこんな風に美味いんだったら、成人前に死んだのは
「良い飲みっぷりじゃねぇか!」
「ありがとうございます」
俺の言葉に、狼男さんは頭をかいて、
「敬語なんてやめろよ? 俺たちの仲だろ!?
「あはは……」
面と向かって話したのは初めてなんですけど?
狼男さんはまた笑って、自らもジョッキに口をつける。
その飲みっぷりはタルサに引けをとらないぐらいに
「ところで、SSランクの姉ちゃんはどこに行ったんだよ? 今日は別行動か?」
「その……タルサはタルサでやることがあって……」
「確かにSSランク様には俺達より色々やることあるんだろぉーなぁ! 機会があったら俺にも紹介してくれよ? 俺さ、悠久の魔女様のとこで働いてんだ。SSランカーなら見ている世界の規模も違うだろうし、良い具合に橋渡しができると思うぜ?」
そこまで聞いて、ようやく狼男さんの目的が自分ではなく、タルサなんだと気付いた。
考えてみれば、当然かもしれない。
タルサという人物の価値は、俺なんかと比べれば計り知れない
狼男さんは俺と違って世渡りがうまそうだと思うが、誤解させたままなのは座りが悪い。
俺は狼男さんに、有りのままを伝えることにする。
「実は、タルサとは別行動することに決めたんです」
「別行動って、どこにいるかも分かんねぇのか?」
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