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 意味不明に聞こえたであろう一言は、ある人物にだけ致命傷だった。


 その言葉が通じる人物は、この集会所に一人しかいなかっただろう。


 彼女は一人で祈っていたハズだ。こんな騒ぎになってしまったが、俺の能力が嘘でパンツのがらを言い当てられないことを信じて。どうして今日に限って子供みたいなキャラもののパンツを穿いてきてしまったのかと呪いながら、それこそ必死に。


 そのすべてを、泣く寸前に見えるコメットさんの顔が物語っていた。


「……い、言い間違えました!」


 俺にはデリカシーなんてないし、公衆の面前でパンツの柄を言い当てられる女性の気持ちは分からない。ハッキリ言って真実だし、自分でこんな質問に決めてしまったのだから自業自得じごうじとくだと思うけれど、どうして今日に限って……そんなパンツを穿いてるんだよ?


 俺は覚悟を決め、集会所に響き渡る声で言い放つ。




「お、大人の女性らしい黒です! 黒のぉ、セクシーな奴ですっ!!」


 


 俺の宣言にざわつく集会所。


 コメットさんはうるうると涙を浮かべた顔で、俺を見つめていた。


 女騎士さんがコメットさんに近づき、声を荒げる。


「黒かよ!? さすがコメットは大人っぽいな!? 正解なのか!?」


 ざわつくのんべえ達に向かって、コメットさんは口を開く。




「せ、正解ですぅうううううっっっ!!」




 コメットさんよ。――否定しても良かったのに。


 拍手や歓声の響き渡る集会所は、さらに盛り上がっていく。


 楽しそうなのんべえ達を見ながら、ふと思う。


 ……異世界転生って、意外と平和なんだな。

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