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 狼男さんは、大剣を背負った女騎士に頭を殴られていた。


「いってぇな! 少し聞けよ! だから――って、どこまで話したっけな? そうだ。コメットが信じてないなら、その答え合わせが多少無茶な質問だって構いやしねぇだろ?」


「それでも下着の色を聞くとかおかしいだろ! コイツ酔っぱらってて……いつも迷惑かけてすみません!」


 女騎士さんは狼男さんの頭を無理やりつかんで頭を下げさせ、自分も頭を下げている。


 仲の良さそうな距離感から、恐らく狼男さんと女騎士さんは仲間同士なんだろうなと思う。


 女騎士さんの言葉に苦笑いするコメットさんだが、


「しかし、一理いちりあるかもしれません」


「え?」


 予想外の言葉に驚く俺を置いてきぼりに、コメットさんは言葉を続けた。


「私のパンツの色が当てられたら、上層部へ掛け合ってみます。それで問題ありませんか?」


 コメットさんは顔を赤く染めている。


「本気かよ!?」


 目を丸くする女騎士さんに、コメットさんはうなずく。


「話の流れとはいえ、私の下着の色が分かるのは私だけであり、この問題は完全な思い付きですから、この問題が事前にれていたとは考えられません。シュウさんの力を試すには、最善の方法でしょう」


 女騎士さんは動揺どうようしているが、コメットさんはひかえめに口を開く。


「私のパンツは、何色ですか?」


 真面目にパンツの色を聞く人を、俺は初めて見た。


 コメットさん自身が言うなら、仕方ないか……?


「少し待ってください」


 俺は席に戻り、ノートパソコンを開く。


 俺は〝コメット〟や〝朝〟〝パンツ〟などのキーワードで、情報を洗い出していく。


 ようやくコメットさんの今朝の描写を見つけ、ふと思う。


「あの、朝食の内容とかでも良いんじゃないですかね?」


「ダメに決まってんだろっ!!」


 狼男さんが俺の背中をばしんばしんと叩きながら声をあげる。


「問題を変えたら、お前の力が証明できなくなるぞ!? お前は死ぬほど願って手に入れた自分の願いが否定されても悔しくないのかよ!? 俺は悔しいし悲しいね! それによ? 実のところコメットには黒のひもパンが似合うと思うんだがどう思う!?」


 そんなの知るかよ!


「何を言ってんだっ!!」


 つばを飛ばす勢いの狼男さんに、近くにいたドワーフさんも近づいてきた。


 狼男さんを止めてくれるのかと思いきや、ドワーフさんも酒を片手に顔が赤い。


「お前は見る目がねぇんだよ! コメットに似合うのは純白の白だ! あの清楚なコメットに淫乱な黒は似合わねぇ! 百歩譲ってもしまパンだろ!? そうだよな兄ちゃん!?」


 知らねーよっ!!


 ってか、痛いから二人で俺の背中を叩くのやめてくれない?


 酔っているからだろうけれど、二人の張り手に俺の背中が悲鳴をあげている。


 俺は二人を無視し、文章を読み進めるために集中することにした。

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