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「すまんかった」


「謝らないでくれよ」


 俺は、そんなタルサに申し訳なくて仕方がない。


「そもそも俺があんな書き込みをしなけりゃ、タルサは迷惑しなかっただろ?」


「いや、そうとも言い切れぬ。あの書き込みでなければ、わらわではなく別の女神の魂が選ばれていた可能性は大きい。自分で言うのもアレじゃが、妾は女神っぽくないからの。そんな妾が選ばれ、こうして現世に生き返れる可能性を手に入れられたのは、お主様の書き込みがあってこそじゃ。その点においても、妾は感謝しておる」


 タルサは目をそらし、続ける。


「お主様は妾といて、楽しかったか?」


 俺の答えは、迷いもなかった。


「今でも楽しいぐらいだ」


 俺たちの異世界は、まだ始まったばかりだった。


 でも、それは不自然な形に歪んでしまっている。


 それを直すことは、俺たちにとって必要なことだった。


「妾は計算高い女じゃ。今はお主様と行動しておるが、それがこの感情からくる行動である可能性は高い。妾の感情が元に戻った時、妾はお主様を裏切るじゃろう」


「裏切るなんて悪い言葉を使うなよ」


 なぜなら、悪いのは俺だから。


「俺の方が、タルサを利用してた。本当にごめん」


 魔術を扱えるタルサは、その〝知る〟願いの力も考えれば、この世界で最強に近いハズだ。


 俺のような足手まといがいなければ、すぐにでもこの世界で上り詰められるだろう。


 それが効率良い選択なのは、俺でも分かる。


「素敵な初恋じゃった」


 タルサは顔を染め、俺を見つめていた。


「お主様よ、今まで楽しかったぞ」

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