俺とタルサの真意

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 ロウディオナス医院から出たら、すでに夕暮れだった。


 俺たちは近くの飯屋に入り、タルサの好物である肉と酒を注文していた。


 がつがつと食い続けるタルサの食欲に驚きながらも酒を飲む。


 ちなみに、この国での飲酒は14歳以上で合法だった。


 さすが異世界!


「あの二人、上手く行くと思うか?」


 酒で頬が上気するのを感じながら、俺はタルサに聞いてみる。


「どうじゃろなぁ? この先は依頼外じゃし、なるようになるじゃろ」


 タルサは硬貨の入った麻袋あさぶくろをぐるんぐるんと回しながら笑う。


 これはメイさんから受け取った謝礼金だ。


 メイさんは貴族の生まれだったらしい。あそこで働いていたのは社会経験を積むためであり、実は働かなくても生きていけるほどの資産があるのだという。そんな相手の悩みを即座に解決してしまったのだから、タルサは恐ろしい奴だ。


「今回はわらわが解決したが、お主様を神へするためにはお主様の力で解決するのが望ましい。依頼主にこびを売れば信者になってくれることもあるじゃろうし、お主様も明日からは働くのじゃ」


 ……確かに、これから異世界で生きていくための流れは分かった。


 俺も依頼をこなして神ランキングを上げなければ――とは思うが、タルサのように上手く立ち回れるんだろうか?


「何か抜け道とかねぇのか? タルサが俺の信者になるとかさ?」


 俺より順位も高いタルサは、魔力だって俺よりも持っているハズだ。


「タルサがその魔力を俺に横流ししてくれれば、簡単に魔力が集まりそうじゃないか?」


「妾もそうしたいのは山々じゃが、それは無理じゃ」


「なんで?」


「妾がここに生まれたのは、お主様が願いによって妾の魂を呼び出したからじゃ。異世界からの召喚ともなれば、それは使い魔の契約に近い。つまり、妾はお主様に魔力を与えるどころか、本来は魔力を貰ってしかるべきなのじゃ。お主様の書き込みによって妾が繋がっておる限り、この魔力の流れは変えることができん。残念じゃったな!」


 タルサはニヤリと笑って、新たに酒を注文する。


「お主様! 難しい話は辞めて、まずは飲もうではないか!」

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