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「……なんで最下位なんだ」


 俺は安っぽい登録カードを見つめながらつぶやく。


 カードの裏面には俺の身体能力などが書かれているが、全て最低ランクなのだろうⅮⅮの文字が刻まれている。信者の数だってゼロだし、このカードの価値も最下位ってわけかよ。


 パンフレットに書いてあったが、本人の能力と信者の数を総合的に判断して神ランキングは順位が決められているらしい。


 せめて信者でもいればと思うが……俺は異世界に来てまだ数時間だ。


 まぁ、時間があっても俺に信者ができるとは思えないけれど。


「くくくく」


 対して、金色のカードを左団扇ひだりうちわにしたタルサはご満悦まんえつだ。


 俺のランクが知れ渡った後、あんなにも沸いていた集会所はどことなく落ち着いて野次馬たちは去って行ってしまった。


「俺、なんかしちゃいましたかね!?」


「お主様は悪くないのじゃ。あの機械は恐らく、現状を測定するのであろう」


「……現状って?」


「人間という種族は、この世界では基本的に脆弱ぜいじゃくな存在なのじゃ。獣人のような腕力もなく、エルフのような魔力も持ち合わせておらんからな。お主様の願いが勘定に入っておらんのであれば、この結果もうなずける」


 確かに、それなら俺は無能力者のただの人間だ。


 そう考えるなら、悔しいけれど妥当だとうな評価だ。


「お主様の力には致命的な弱点がある。あの機械はそれに気づいておるのかもな?」


「俺の願いの弱点? ……それって何なんだ?」


「これはお主様が知ってしまうと発動する厄介やっかいな弱点じゃ。お主様はそれに気づかぬほうが都合がよい。わらわからできる助言は〝それに気付かぬほど馬鹿でおれ〟ということぐらいかのぅ」


 気付くな、か。


 また難しい助言だ。


 でも、考えてみれば、この世には知らないでいたほうが幸せな事実もある。


 そういうたぐいの話か? いや、少し違うかな。


 ……それにしても、


「タルサはいつも楽しそうだな?」

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