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 タルサと一緒に過ごして気付いたけれど、タルサはどこにいても笑っている。


 それが絶対的な自信からくる笑みだとは分かっていても、その笑顔はタルサに似合っていた。


「人生は楽しんだ者の勝ちじゃからな! それにわらわが嬉しいのはお主様がおるからじゃよ! お主様といられるのであれば、妾は幸せなのじゃ!」


 タルサの言葉にドキリとする。


 登録の結果はひどかったけど、タルサが笑ってくれるならいいか。


「では、そろそろ初仕事といこうかのぅ?」


「おう!」


 一息ついた俺たちは、依頼書の張られた掲示板の前に向かっていた。


 それはもちろん、仕事を請け負って魔力を集めるためだ。


「どの仕事がいいと思う?」


「それについては妾に考えがある」


 タルサは迷わず下の方に貼られていた依頼書の一枚を掲示板からはがす。


 その依頼書の隣には〝急募ネコ探し〟と書かれていて俺は眉を寄せた。


 ここに貼られているのはDDランク用の依頼書ばかりだ。


「タルサなら、もっと良いランクの依頼があるんじゃないか?」


「DDランクとはいえ、時には報酬がSSランクを上回ることもあるのじゃ。それに今日はもう昼過ぎじゃし、無一文では宿も取れぬからのぅ。まずは手っ取り早く稼げる依頼をこなす」


 ……タルサってやっぱり頭いいんだな。


 依頼書から顔を上げたタルサが、ニヤリと笑う。


「妾が受ける依頼はこれじゃ!」


 その依頼書はDDランクで、しかも報酬ナシと書かれていた。


 その内容を見て、俺は眉を寄せる。


〝恋愛相談〟


「……タルサって、恋愛経験はないんじゃなかったか?」


「安心せよお主様! 妾は現在進行形で恋する乙女じゃ!」


 こちらをまっすぐに見つめてくるタルサに苦笑いしか返せない。


 ……本当に大丈夫か?

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