14


「……まずはあなたから消して差し上げます」


 天使が手を天へ掲げると、中空に無数のランスが生まれた。天使はそれらを掴み、こちらへ何本も投げつけてくる――が、


「恨むならば、自らの無知を恨むが良い」


 タルサは的確にその一つ一つを叩き落としていく。


 それはまるで踊っているかのような、一部の無駄もない華麗な動きだった。


「天使殿の目的は何じゃ?」


「死に逝く者には不要の知識です」


わらわとしたことが、どうしても好奇心が上回ってしもうた。手荒なことは避けるつもりじゃったが仕方ない」


 タルサが手の平を天使に向け、横なぎに払う。


 それに呼応するように、突風にあおられた様にして天使の翼が折れた。


 重力に逆らえず、天使はそのまま墜落する。


「相手にならんな」


 地面に叩きつけられた天使に、タルサはゆっくりと近づいて行く。


「タルサ!」


「危険じゃから、お主様は近づくなよ?」


 俺は両者を見ながら何もできないでいた。


 俺にわかるのは、タルサの方が天使よりも圧倒的に強いということだけだ。


「……私の力が通じないとは恐れ入ります」


「負けを認めるのであれば、こちらの質問に答えてもらおう。天使殿の目的は何じゃ? なぜシュウ様を狙う? この空間を創り出し、シュウ様をここに呼び出したのは天使殿か?」


「その答えは――これです」


 瞬間、天使の手に新たなランスが生まれ、タルサに襲い掛かった。


 不意打ちの一撃は、タルサの右腕を突き刺した――様に見えた。


 しかし、タルサの右腕は、負けるどころかランスを削り取り、逆に破壊していく。


「馬鹿な!?」


「妾の武器は、天使殿の武器とは次元が違うのじゃ」


 ニヤリと笑うタルサの指先に、何かがつままれている。


 俺は目を細めてソレを見定める。


 タルサが振るっていたのは――


爪楊枝つまようじっ!?」


「くくくくく。コイツはこの世界で最強の武器なのじゃ」


 ランスを粉々に破壊した爪楊枝つまようじを、タルサは天使の喉元へ突き付けた。


「お主様の書き込みで天使殿を拘束こうそくせよ」


「わかった!」


 俺はノートパソコンに向かい、天使の身体を縄で縛ることにする。


「あとはゆっくり世間話でもしながら、天使殿の目的を聞こうではないか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る