13


「お主様の力は万能じゃから〝生き返った〟とパソコンに書くだけでわらわたちは現世に蘇れる。少し考えれば分かる事じゃよ? まったくもってチート能力じゃな」


 確かにそうかも知れない。


 俺はパソコンに手を伸ばして――しかし、タルサへと顔を上げた。


 タルサは俺と視線が合うと、またにこりと笑って見せた。


「……短い間だったけど、ありがとな」


「歪められた感情かも知れぬが、妾がお主様を愛しておるのは本当じゃ。妾にとっては曲がりなりにもこれが初恋で、それを体験できたのも面白かったぞ。何者の仕業かは分からぬが、お主様に出会えたのは感謝すべきじゃろう」


 気持ちよく笑うタルサを見て、もう少しだけ話したくなった。


「タルサも死んでこの世界に来たんだよな? どうして死んだんだ?」


「妾の世界は魔法による戦争が盛んでな。妾は女神と呼ばれる最高位の魔法使いじゃったが、仲間を守るために死んだのじゃ。仲間を捨て置けば生き残れたであろうが、妾は誰かを守るために死ねるのなら本望じゃった。しかし、まだ妾は戦えるらしい」


 くっくっくっくっく。


 笑うタルサを見て、少しだけ不憫ふびんに思う。


 タルサはまた戦うために生き返るっていうのか?


「早く現世に帰ろう、お主様?」


「それは困ります」


 謎の声に顔を上げると、上空に天使がいた。


 天使は西洋の甲冑かっちゅうを着ていて、その背中から白く美しい翼が伸び、羽ばたいて中空に留まっている。顔を覆う兜をかぶっているから、どのような表情なのかは分からなかった。しかし、彼が俺たちの敵であるということが、そのたたずまいから伝わってくる。


「すでに別の魂を具現化されておられるとは驚きですが、それは創造神様には過ぎた力。私が代わりに制御いたしましょう」


 天使が手を振ると、その手には手品のようにランスが現れた。


 天使はそのランスを振りかぶり、躊躇ちゅうちょなくこちらに投げつけてくる!


 高速で迫るランスに、俺は何もできない――しかし、


「無礼な奴じゃな?」


 俺の前に出たタルサは、いとも簡単にランスを弾いていた。


「……私のランスを、素手で弾いたのですか?」


 こちらを見下ろす天使に、タルサはニヤリと笑う。


「今のが素手に見えたのか?」

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