12


「なるほど」


 この場所については何となく分かった。


「……でも、なんでこんなところに俺たちはいるんだ?」


「それはわらわも知らぬ。そもそも、この空間に魂以外が存在することはイレギュラーじゃ。どこかの馬鹿が高等魔術を行使したのじゃろうが、この世界の外に関しては妾も知らぬからな」


 タルサの言葉に納得する。


 タルサは俺の書いた文章の通り、この世界の全てを知っているが、それ以外は知らないんだ。


 ……ということは、文章の通りに俺のことが好きなんだろうか?


 目が合うと、タルサはにこりと笑った。


 口を閉じてさえいれば、タルサはこれ以上ないぐらいに可愛いと思う。


「俺たちは、これからどうすればいいと思う?」


「それは妾も知らぬ――と言いたいところじゃが、提案があるぞ?」


 タルサは椅子から立ち上がり、机に手をついて上半身を前に押し出す。


 顔が近づき、たわわな胸が揺れて強調されていた。


「妾はお主様を愛しておる!」


 タルサは顔を染め、俺を見つめていた。


「この世界のアダムとイブになるというのはどうじゃ?」


「そ、それは、つまり?」


「もう少し分かりやすく言った方が良いかの? 妾はお主様を受け入れたいのじゃ。精神的にも、肉体的にもな? つまり、妾にお主様のたくましい――」


 タルサは俺の股間の方を見つめ、ニヤリと笑う。


「モノなどいらんっ! これはただの冗談じゃっ!!」


 すでに顔を赤くしていたのは俺だけだった。


「くっくっくっくっくっ!!」


 タルサは腹を抱えて笑い出し、机をバンバンと叩く。


「お主様、童貞かぁ? 死んでも死に切れんとはこのことじゃな!」


「お、俺の純情をもてあそびやがって! 俺はタルサに興味なんてねぇよ!!」


「胸を見ながら言っても説得力がないのぅ! そもそも生娘きむすめでなければ女神から格下げになってしまうわい! まずはその童貞丸出しの性格を直すところから努力するのじゃよ?」


「大きなお世話だ!」


 タルサはようやく笑い終え、目にたまった涙を指で拭う。


「さて、冗談はこのぐらいにして、妾はお主様がどうするべきか教えてやろう」


「……今度は本当だろうな?」


「美味いモンも食べ終えたし、お主様をからかうのも楽しんだ。それに妾は知っておるぞ? お主様は死ぬまでに叶えたい夢があったのじゃろ? ならば、現世に戻るべきじゃ」


「生き返れるのか!?」

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