act6浄化の雨、黒き火柱、走る雷
魔人、それと対となる言葉は聖人、聖人とは言わずもがなキリスト教で聖職者の中でも教祖や高弟、崇拝・崇敬対象となる過去の人物をさすことが多い、つまり天使が如き人間。
悪魔の如き魔人と天使が如き人間、これこそがアダムとイヴが禁忌の果実を食べた後より続く善悪概念戦争であり、キリスト教二千年の歴史そのものでもある。
魔人は
聖人の
何より、
池袋フィボナッチ教会の神父、華蒼院ガブリエラは池袋60階通りに雨を降らせていた。
ゾンビとなった穢れた肉を洗い流し、そして壊れた魂を再構築する治癒の雨であった。
そして、人々は集団昏睡状態にあったとだけになる、神の信徒特有のご都合主義である。
そこに鬼堂辻が駆けつけた。
「おや、辻さんじゃないですか」
華蒼院ガブリエラが彼に声をかけた。
「魔人同士が戦ったのか?」
「まぁ、正確には
「『禁忌六大魔族』か、それは厄介だな」
『禁忌六大魔族』、ロシアに封印されし最凶の存在、
魔人の中でも六勢力と呼ばれる最悪の者達、どこまでも人間族をやめてしまった魔族。
「お前がいなかったら死んでただろうな、何せ鈍器型デスサイスはマジでヤバいからな」
「別に聖人ならば『魂再生能力』は簡単だよ、精神崩壊した心だって元通りだよ?」
「それは良かった」
鬼堂辻は心を緩め、懐から煙草を出して火をつけようと思ったが雨が降っていたのでやめる事にした。
「まぁなんだ、日本には血族だけで十分なのに他の『禁忌六大魔族』が来てほしくない」
「ごもっともですよ」
「『魔神』と渡り合った今の俺なら『禁忌六大魔族』相手でさえなんとかいけるかもな」
「『魔神』とねぇ、さては『魔人』にさせられて、それに激昂してしまったかね?」
「……仰る通りですよ」
その二人に誠実な驚愕と衝撃が襲う。
池袋60階通りを含め、豊島区全域を降る雨、火の手が上がるはずはなかったが黒い火柱が西池袋の僻地から上がっていたのだ。
「「は?」」
二人はすっとんきょうな声を同時に出した。
◆
抑止力とはさりげなく働く、それもどこまでもありきたりで、それは昼過ぎにマクドで複雑にハンバーガーのセットを頼み、他の誰かを待たせた数秒、数分でもそれは同じ事だ。
正確には抑止力ではなく、抑時力と言うべきだろう、未来を阻害して現在に改善させる、それはやがて過去になるだけで終わるだろう、本来、自分のあるべき未来を手に入れられない事を憎しまなければの話だが。
◆
幻の金属ヒヒイロカネを贅沢に使った檻の座敷牢の中、畳が敷かれ、布団と枕がある。
あとは一人の人間、それしか無い。
退屈で死ぬしかないような空間だった。
だったらやはり、その人間の抑圧が閾値に達した。
「今日の
その人間、『あの男』を中心に火の手が上がる。
「ンナー!!!?なんだ!?バカな!ヒヒイロカネは燃えないはず!てかヒヒイロカネってなんだ!?なんか凄い金属なんだろう?」
看守がヒヒイロカネにツッコミながら言うが、そのヒヒイロカネが溶けていく。
熱波に当てられ看守も溶けていく。
無惨にも、とてつもなく呆気なく。
檻の中の存在、『あの男』は言う。
「温度の上限が存在する。1プランク温度と呼ばれ。 その温度は14168000000000000
000000000000000000Kで、漢字の単位で表記すると14溝1,680穣℃となる。 ビックバンから約5.4×10^(−44)秒後の宇宙の温度がこの温度とされている。 人類が生み出した最高の温度は2010年の実験で記録された4000000000000℃である。漢字表記で4兆℃となる。 文字通り天文学的な数値であり、こちらはフィクションで使われることはまずない。ならば、この魔人事件簿にて歴史上、俺様が初めて、使うはめになるな」
『あの男』は長説明の後、メタ発言をした。
それに、更に能力を解説する、それは能力バトルで忌まれるがスケールのでかさがそれをしても許されるような感じを醸し出した。
「平行世界を重ね合わせる能力はお金持ちになれる能力、A世界で一万、B世界で一億、Cで一兆円の三つを合わせれば一兆一億一万が手に入れられる、温度だって同じことだ」
座敷牢の上の壁もヒヒイロカネで出来ていた、その外壁全てヒヒイロカネで出来ているのだが作者はヒヒイロカネを凄い金属という解釈しかできないので鉄よりスゲェヤツとこの場合思ってくれても構わないし、それにしても、どんな金属にしたって溶岩をかけた場合、きっとなんでも融解してしまうだろう。
炎の塊、超灼熱地獄、そして上に縦方向に火は渦巻きを上げながら、天井を溶かしていき、地上まで達し、天まで伸び、それゆえ。
「バイビー」
『あの男』は怪盗台詞を言い残し去った。
地上まで達した所には穴が当然あり、そこから飛び出した、火柱を昇龍のように昇る。
「ヒヒヒェヒェヒェヒェヒェ!」
吐き気のするような不気味な笑い声。
それを、出しながら、大空と呼べる部分まで昇り、折角だから炎の塊で生命体を創った。
火柱は消えたが火の塊は形を変えていた。
燃え上がる炎の塊で形成された六本腕の赤い蟷螂、『紅蓮阿修羅蟷螂』と呼べるだろう。
『あの男』はそれを使役し、池袋の繁華街に『紅蓮阿修羅蟷螂』を向かわせていった。
自分は太陽を睨み付けるようにしていた。
「太陽の温度すら超越する歴史的一歩だ」
◆
「ナンダァ!アリャア!?」
『撲殺探偵』山峰獅子騎はそれを見て、そこら辺のバイクを掻っ払い火柱の火元に向かう、きっと、それは自分と同じ能力者だと。
「放火は大罪だ?殴り殺してやんゼェ!」
全身を放電させながら、単車は駆け巡る。
◆
火元、『あの男』に近付く者達、合計五人。
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