act4二人の怪盗、魔人同士の闘い!


死神怪盗ソウルバッカーは拘束された柊夕美の前に忽然と現れた。


さながら、名を体に表すように。


死神怪盗ソウル・バッカーは黒い燕尾服に髑髏どくろの仮面を被っていた。


「そうだな、その鋏について説明しよう、それは『魔導具』と言って、持った者を『魔人』にする、残留思念、邪念の残り粕、悪意の残り香、それが染み着いている、概ね、悪党が愛用していた凶器だ、『罪器怪盗』アウトレイジ・アクターならそれそのものを奪うだろう、『魔導具』そのものが自我を持つモノは珍しいしな、自分はその『魔導具』の残留思念を奪いたい」


「それが『あの男』の魂って事?」


「そもそも、『魔人』と『魔神』は『魔霊』という存在がキーワードなんだ、『魔霊』とは悪魔、悪霊の両方の要素を兼ね備えた存在、『魔人』は『魔霊憑依者』、『魔神』は『魔霊王』、ついでに『魔霊』が物質界に具現化すると『魔物』になるわけなのだが」


「『魔導具』そのものに『魔霊』が宿っているからそれを貴方は奪いたいと言うの?」


「『あの男』は『魔神』だから自分の邪念を分割した『魔霊』を凶器に入れて『魔導具』を創れる、『魔人』も創れるが魂に直に注入しないといけない、自分の魔人の異能ダーク・スキルは魂に干渉する事だがそれは出来ない、だがしかし『魔霊』は創れないが『魔霊』を奪うことはできるのだよ、マドモアゼル」


「ならさっさとやってくれるかしら?」


柊夕美の人格が『あの女』になって言う。


「元よりそのつもりだ」


死神怪盗ソウル・バッカーが鋏に触れ、飴を引き伸ばすように魂を出していき、半透明のメモリースティックみたいなのを形成した。


「はい、終わり」


「ちっちっ、おいおい罪器の価値が半減しちゃったじゃねぇかよコノヤロー」


二連続舌打ち、無骨なオラオラファッション上下の上にライダースーツと海外製造の高級ブランドシモンの安全靴を履いている、その男が柊夕美の監禁されてる部屋に入りながら悪態をついた。


「ちっちっ、先を越されたか、バカヤロー」


「『罪器怪盗』アウトレイジ・アクターか」


「ちっちっ、あぁそうだよコノヤロー、『死神怪盗』ソウル・バッカーさんよぉおお!」


「お前に朗報だ、俺は今回、片割れの魔霊の魂を奪ったがこれは新たなるお前の言う罪器、『魔導具』になる予定なのだがね」


「ちっちっ、違うねぇ、罪器って言うとはどんな狂った経緯があるかが売りなのよ、新しい価値観なんて言うとはざらに安いんだよ」


「確かに炎と氷の二つを使えるこの鋏のレア度は高かったかもな、しかし、炎と氷を同時に扱えるって事は半減しながら使わなければならない、こと、、痴話喧嘩の多い一品だぞ?」


「ちっちっ、その狂った経緯は最高の『罪器』だろうがコノヤロー!」


「そうか」


ガガドン!


柊夕美が捕まった廃ビルは一階より上の場所にあり、一階から何か地面を突き破って何かがその場に現れてしまった。


「オバッ!!オババババババ!」


バーテン服に金髪ツーブロック。


「魂に干渉出来る能力はこのようにゾンビを創る事はできる、これは『撲殺探偵』山峰獅子騎だ、このゾンビは魂の残粕を無理矢理増幅させたにすぎない、そうすると元々の人間の一番悪意を持った部分が誇張される、これの場合はそうだな、暴力がしたいだろうか」


『罪器怪盗』アウトレイジ・アクターはそれを見て、ニヤリと笑った。


「なんだ、暴力かよ、それって俺様の得意分野じゃねぇか!俺はよぉ!『罪器』は使わん!奪う時は徒手空拳!俺の盗みとは『魔導具』使いより強いっていう勲章なんだよ、だからまぁ、単なるゾンビでは勝てないさ!」


「オバァ!」


ゾンビの『撲殺探偵』山峰獅子騎が『罪器怪盗』アウトレイジ・アクターに襲いかかる。


「しかし、俺も魔人の端くれ、徒手空拳といったが魔人の異能ダーク・スキルを使わないとは言ってない、俺のはとことんシンプルでな、それは『筋肉操作』なんだよなぁ!ひゃははは!」


右腕、左腕が膨れ上がる、ライダースーツがパツンパツンになっていく。


そのまま右拳を握りしめ、殴りつけた。


「オバーッ!」


『撲殺探偵』山峰獅子騎は吹っ飛んだ。


当たった壁を砕け飛ばし、そのまま廃ビルの外へ出ていった。


『死神怪盗』ソウル・バッカーはそれを見て、まぁそれもそうか、という顔をした。


「ここまではいつも通りのパターンだな」


『罪器怪盗』アウトレイジ・アクターは笑い狂い、そのまま砕けた壁の向こう側へ走って、そして廃ビルから飛び出していった。


「アイツは戦闘狂でな、一度戦闘になると戦闘以外には脳が回らなくなる、その隙に私はお暇することが出来るのさ、ではバイビー」


「ちょっと待って!」


「怪盗がお決まりの別れ台詞を言ったならそのまま帰してほしいな」


「なんで、今なの?」


「その鋏はどっかに厳重に保管されてたが『撲殺探偵』山峰獅子騎が『私立処刑人』としての探偵の権限を悪用してそこから出して、裏路地に放置して誰かが拾ってそのまま飛び出した所をボコボコにするって寸法よ、そういう『魔導具』を使った一般人を『魔人』化するそういう輩は意外にも多いよ」


「そう、ところで『あの男』はどうしているのかしら?」


「池袋の地下の座敷牢に入れられてる、『あの男』の魔人の異能ダーク・スキルなら脱獄は簡単だろうと思うけどな、話は終わりか?バイビー」


最後に無理矢理バイビーを言い、『死神怪盗』ソウル・バッカーは忽然と現れたのは逆に忽然と姿を消した。



一方廃ビルの外では探偵と怪盗同士の闘いが繰り広げられていた。


最初は『罪器怪盗』アウトレイジ・アクターの優勢で一方的に『撲殺探偵』山峰獅子騎は攻撃を受けていたが状況が変わろうとした。


「人間凶器かよバカヤロー」


『撲殺探偵』山峰獅子騎は暴力的な本能を活性化させられた事により魂を『魔霊』に近づき、そのまま『魔人』になろうとしていた。


「俺のパクりでもするんか?コノヤロー」


「んにゃ、『筋肉操作』なんていらねぇよ、パワーより大切なのは殴る速さだからなぁ」


『撲殺探偵』山峰獅子騎は魔霊化した魂に自我を戻すと同時に魔人の異能ダーク・スキルを発動する。


それ即ち、魔人になったと言うことだ。


『撲殺探偵』山峰獅子騎の全身が放電する、そして全神経、全筋肉に電気が駆け巡り、刹那、彼は高速移動して猛攻を開始した。


「暴魔雷乱!!!」


「ゴバッオアッグァアッッッ!」


三連続の攻撃、鳩尾にパンチ。アッパーで顎をパンチ、そして頬を思い切りパンチする。


最後がクリーンヒットして回転して飛んでいき、壁にぶつかり、地面へ落ちていく、そこから這いつくばり、立ち上がろうとする。


「てめェ!なんてふざけた能力なんだコノヤロー!!ぶち殺すぞコノヤロー!!!!!」


「殺されるのはテメェだよ」


落雷の如きかかと落とし。


「ガアッ!」


そのまま踏みにじり、放電をする。


「アババババアバババアバババババアバババババアババババババババアババババババババババババババババババババババババババ!」


『罪器怪盗』アウトレイジ・アクターを駆け巡る電気。


「どうした?終わりか?」


「な、なめんじゃねぇぞコノヤロー!!」


その踏みにじられた足のくるぶしを掴み、空中に投げ飛ばした、そして漸く立ち上がり、地面を破壊して、その瓦礫を空中を浮遊している『撲殺探偵』山峰獅子騎に投げていく。


「小賢しいなぁ!暴魔大雷!!」


両手を華のようにしてその中心に電気を集めて、一気に放電した、さながらそれは白いビームにも見えてしまった。


瓦礫を空中分解して崩壊していきながら『罪器怪盗』アウトレイジ・アクターの元にそれは向かっていき、『罪器怪盗』アウトレイジ・アクターは全身にそれを浴びてしまう。


「グ、グヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!」


「暴魔雷導破壊蹴」


そしてその白いビームを辿りながらライダーキックよろしく、下斜めの方へキックする。


『罪器怪盗』アウトレイジ・アクターはそのキックを、上斜めの方へキックし相討ちに。


空中に二つのキックがぶつかり合い、相殺。


そのまま自由落下する二人。


そのまま『撲殺探偵』山峰獅子騎は言う。


「あの俺をゾンビ化した『死神怪盗』ソウル・バッカーとかいうやつはどうする?」


「………必ずぶち殺す」


「俺はもう生体電流も放電出来るから自力でゾンビ化は続けられるが、まだやるかい?」


「はっ、勝てる気がしねぇよコノヤロー」


『罪器怪盗』アウトレイジ・アクターは満足げに言い切った。


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