act1始まる破滅の調べの序奏!



この物語にはモラルはない。なにほどかの悪を指摘しているにしても、


この物語は、それに対する療法を与えるものではない。


「アンベアラブル・バシントン」より。



『あの男』を一言で言えば下劣畜生、目的は常に浅はかでそこに悪の美学は介入しない、思想に目覚めそうになってもそれすら浅い。


正直、プロローグの御大層な次世界推進委員会の思想すらも薄っぺらい蜂蜜砂糖漬けだ。


『あの男』にとって人を殺すという事は『見下す』という行為であり、そこに愛など存在しない、マゾヒストならばそれに刺激されて、興奮を覚えるがそれは決して恋愛感情とは程遠いモノである、豚を見る目もここまでいけば邪眼であるだろう、それは生命ある者に怯えている、つまりはネクロフィリアなのは死体は動かず、自分は動ける、その立場関係を分かるのだから、という理由が大きい。


老若男女、平等に見下ころす。


それが『あの男』の殺戮である。


そんな『あの男』の愛用する凶器、それは鉈のように分厚く、それでいて、剃刀のような細さと長さの四角い両刃の和式ナイフを重ね合わせた鋏である。


グランギニョール(仏: GrandGuignol)、フランス、パリに19世紀末から20世紀半ばまで存在した大衆芝居・見世物小屋のグラン・ギニョール劇場(Le Théâtre du Grand-Guignol)のこと。またそこから転じて、同座や類似の劇場で演じられた「荒唐無稽な」、「血なまぐさい」、あるいは「こけおどしめいた」芝居のことをいう。フランス語では"grand-guignolesque"(「グラン・ギニョール的な」)という形容詞は上記のような意味合いで今日でもしばしば用いられる。


それを当て字とした惨劇狂宴グランギニョルというおぞましい武器。


それがまさに、街に落とされた。


それを落とした存在は微笑んで言う。


「開幕だ」



そしてグランギニョルの幕が上がる。



「なんですかねー、あの鋏」


「んー、美容師の落とし物かな~」


池袋西口の裏路地、二人のギャル女がそれを見つけた、しかしそこから放たれる邪気、否、そこに染み付いた歪な殺気を感じ取った。


「や、やめよーよ拾っちゃ危ないよ!」


「えー、いーじゃんちょっとぐらい」


二人のギャル女の片割れがそれを握る。


「ヒェヒェ」


奇声に似た笑い声。


「ヒェヒェ?」


怪訝そうな顔をする二人のギャル女の片割れ。


「ヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェ」


狂った道化師という有り様、それに二人のギャル女の片割れは怯え、同時にそれをさせたと思える元凶の鋏を取り上げようとした。


しかし。


「ヒェーヒェー」


喉に刺さった鋏、それが息を途切れ途切れにさせてしまう二人のギャル女の片割れ。


「ヒェヒェヒェヒェヒェヒェ!!」


それを見て笑う二人のギャル女の片割れ。


「ヒェ?」


刺さった先、ドボドボからベトベトになっていく鋏を持った腕。


「ひょえーーーー!!!?」


そこで我に返ったらしい。


「あ、ああ、私、何て事を」


涙。


二人は恋人だった、ワンルームをシェアして二人暮らしするほどの中、LGBT炸裂!するぐらいにはかなりのレズカップルだった。


ジョキジョキン!


それは開くと共に切り、閉じると共に切る両刃式であり、それで首前半分を切り抉る。


そして抜く。


今度は腹部をゾブリゾブリと二度刺す。


ジュパジュパ。


切られる右腕とその先の右手。


そしてヤクザの指積めよろしく右手の五本指を五等分にした。


ゴォリゴリゴリ。


それを全て食べて笑う。


それは一安心からの笑い。


ーーーまだやり直せる。


そして彼女は死体の解体を始めた。


一つになるため食べやすいように。



食べ終わった後、彼女のいない世界を自覚した、同時にこれから


血塗れたセーラー服。

赤色まだらの金髪。


「ヒェヒェヒェヒェヒェヒェ!!」


絶叫と共に裏路地を出てーーー


「ヒェガッ!」


腹パンされた。


「ひゃーはは!頭悪い女ありざーす!」


そこにいたのはツーブロックの金髪をしているバーテン服の男。


「俺は『撲殺探偵』山峰獅子騎」


「ヒェ?」


困惑。


「文字通り撲殺をする探偵」


「ヒェバッ!」


再度の腹パン。


「人を殺したな、それは罪だ、よって『私立処刑人』として現行犯独断死刑を開始する事ができる!たのしーねー!ひゃっはー!!」


不良には二つのバイオレンスをするモノしかいない、自己防衛か快楽、彼、『撲殺探偵』山峰獅子騎はその後者であった。


『私立処刑人』として無理矢理罪を犯させた瞬間、殺すのを楽しみながら独断死刑をするやからが実は多い。


彼はそのうちの一人で。


頭の悪い女を撲殺するのが楽しみだった。


「てめぇが泣き叫ぶまで!殴るのはやめねぇからなぁ!覚悟しとけぇ!」


「うううう」


むやみやたらに鋏を振り回す。


殴られる殴られる。


それでも鋏はとり憑かれたように握りしめたままである。


鳩尾に一発されて嘔吐。


胸骨に執拗に浴びせられて、その何本も折れて、肺にも何本も刺さってしまう。


防戦一方すら出来ないまでの蹂躙。


「やっぱ、拾わなければよかった」


後悔、慚愧、懺悔、そして涙。


「泣いたなー、でもやーめないィ!」


「私も一緒だよ」


相手の拳を自分の手のひらが勝手に包み込んだ。


「あっ」


「私とお前はもう同一存在だぜ?」


「なにしやがんだてめぇ!覚醒か?境地に陥ったから覚醒か?ざっけんなこら!」


「ふざけてるのはお前よ!」


包み込んだ拳の少し後ろの手首から手を切り落とす。


「アガアアアア!!!いてぇなぁ!」


「そのまま愚地独歩みたいに切られた腕の断面で殴りかかるのかしら?」


「至極当然ダァア!!!」


シャキン!


裂けるチーズよろしく右半分と左半分に腕は裂かれてしまった。


「ギィヤァァァァァアアア!!!てめぇ!よくもてめぇ!ブチ殺してやる!!!」


「最初からその気ではなかったカーン?」


二人なら倒せる、二人でプリキュアには程遠いゴアマックスで心がシンクロしてる。


これなら勝てる!と二人は思った。


立場逆転、猛攻をしていく。


「ずたずたですよぉ!!」


さながら狂戦士ベルセルクのように、それでいて二人で一人な彼女は鋏を彼に向けて、そして全身をずたずたにしていく。


もはや勝てる、二人の心は確信した。


「おのれ!低能ギャルの分際で!」


だがしかし、その『撲殺探偵』山峰獅子騎の悪態を皮切りにーーー


百合にちんぽを挟むが如く二つの女の人格がぼくの人格に上書きされるのである!!


「ククッ、何だ、学歴コンプレックスか?」


声音が変わる、低音、男に近い。


「二重人格?いやまさか」


「何を驚いている、『あの男』の殺意と殺気が染み付いた凶器、残留思念のぐらいついていてもおかしいことではあるまいて」


「否!貴様が『あの男』の残留思念!」


「ご名答、ならこの問題を答えられるか、次元は十一次元あるがそれならば次元が十一個ある事になる、二次元、三次元そこまでは分かるだろう、四次元、五次元辺りならば知ってる人は知ってるだろう、ならば零次元はあると思うか?あると思うだろう?」


「そんなものはない!」


「馬鹿が!零次元はあるんだよ!小学生卒業後、飛び級でアメリカの物理学科の大学に留学して発見したんだよ!零次元とは点!ぼくはそれを司り点の力を使いこなせられる、点を広げて概念を産み出せば『創造』、一次元以上の多次元を点に戻せば『消滅』、頭の悪い貴様にも分かるように言えばぼくは神だ」


⊃点⊂


「神?はは!そんなバカな!」


「クククククク」


「フフフフフフ」


「ヒェヒェヒェヒェ!!」


「ハーハッハッハハッ!」


笑い合う二人。


『撲殺探偵』山峰獅子騎が殴りかかる。


「似非教祖野郎が!」


右ストレート。


しかし、鋏を振り落とす仕草をする。


「真なる現人神様に向かって不敬である」


それだけで右腕が肩から手のひらまで消えてなくなった。


肩からは夥しく流血が始まった。


「グヲヲヲヲヲヲヲヲ」



「君は卑劣な存在だよ」


西海岸の物理学系の面談室、白人教授と若き日本人学生が椅子と椅子で向き合っていた。


「はてさて、どうして?」


「君は天才としてこの学校に入ったが彼女の卒業論文を盗用していけしゃあしゃあと私にそのように立証を提案してきたんだよな?」


「途中の部分が風評被害ですよ」


「あの子は努力したのを知ってる、何度も私に質問を繰り返し、一次元について解き明かすのに誰よりも熱心だったのを知ってるよ」


「それで?」


「君の専門は天体物理学ではなく量子物理学だろう?なのにどうしてここまで宇宙の始まりと終わり、ひいては我らが唯一神、アルファとオメガにここまで興味を持っている?」


「後半のはクリスチャンだからですよ」


「本当か?」


「はい、もちろん」


ため息、そして懐から葉巻を取り出し、シザーカッターで吸う部分を切り、バーナーで先端を焼いて火をつけた。


「ところで君はウォークマンでどんな曲を聞いている?」


「アメリカンズ、クイーン、キング・クリムゾン、ビートルズ、AC/DC、後はーーー」


「もういい!嘘はやめろ!君の聞いてるのは主にマリリン・マンソン、あのイカれたサタニスト野郎だ!おいたが過ぎるぞ糞野郎!」


「はぁ、それだけですか?」


「それだけとは?」


「アビゲイル・ウィリアムズ、エンペラー、ディムボガー、ベヒモス、メイヒム、ダークフューネラル、これらはブラックメタル」


「ブ、ブラックメタル?」


ブラックメタル(Black Metal)とは、ヘヴィメタルのサブジャンルの一つ。

『デスメタルを否定し、そのルーツであるスラッシュメタルへの回帰という形で』生まれたとされる。速いテンポのドラムに、金切り声のようなボーカル、音を強めに歪ませたギターでのトレモロのピッキング、宗教的で荘厳なアレンジなどを特徴とする。歌詞の内容には、サタニズム及び黒魔術への傾倒といった、反キリストを強く打ち出したり含むバンドが多くあり、ブラックメタルバンドの中には、ペイガニズムなどを掲げるものも多い。


「ーーーまぁサタニストバンドですよ」


「は?」


「そうだ、お子さん可愛いですよね」


「………息子は七歳になるな」


「ルシファーはショタコンらしいですね」


「………君は?」


全性愛者パンセクシャルですよ」


全性愛者、 男性・女性の二分類にとらわれず、すべてのセクシュアリティの人に対して恋愛感情を寄せ、性的欲求を感じる性的指向をもつ人。 パンセクシュアルpansexualあるいはオムニセクシュアルomnisexualとよばれる。


「人類愛、つまり神に近い考え方を持っている、一次元は神になれる力、それは是非とも自分が持たなければならないと思うのです」


「それこそ魔王ルシファーの考えではないかね?」


神になりかわろうとする思想は同一だ。


「かもしれません、何か問題でも?」


「大有りだ!」


その叫びを一笑して、自分語りを始める。


「まず私の能力を教えてましょうか、自分は零次元に頼るまでもなく、私は個人的に衛生を打ち上げたり個人的に宇宙旅行を楽しんできました事もありますし、ブラックホールの中に入ってきて生還を話した最初の人間で私はブラックホールの中の生命体、仮に『魔神』と名付けますが、そこから能力を賜った」


「どんな能力だ?」


「平行世界を重ね合わせる能力、これはPart7 スティール・ボール・ランの登場人物である、ファニー・ヴァレンタイン大統領の持つスタンド能力であるD4Cとは違いお金持ちになれる能力を持っている、しかしあくまで寄せ集めでしかないんですよ、笑えます」


「あぁ、ジョークのような能力だな」


「だから後は能力が今欲しい、そうすれば自分はとことんまで完璧に近づくのですよ、教授、貴方の黙認があればこそ、悪魔との取引は悪魔が一方的にするものですがこの場合、自分のご子孫を人質にとられているわけですし認めてくださいよ」


「…………あぁ分かったよ」



零次元は低次元の把握しきれない領域だ、それは『点』、素粒子の素、素粒子素オリジンと言われ、宇宙中のどこにでもあり、どこにもない概念体とされている、それを掌握する事は神に等しい力を得る事に繋がるのである。


『あの男』は悪魔の如き卑劣な手段で神に近づいたのだった。

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