日本語は難しい

「好きなの」

 山村の言葉が脳内でリピート再生されている。

 いったい何が好きなのだろうか?

 流石に勘違いしたくないが、「君のこと…好きなの」と言っていた気がするが。


 … !、わかった!『きみ』じゃなくて『黄身きみ』だ、

 きっと山村は卵の黄身が好きなんだ。

 でも何で唐突に?話の脈絡が合わないよな。

 俺も卵の黄身が好きだし返答しとくか。


「なぁ、山村?」

 少し落ち着いた山村に声をかける。


「何?」

 ムスッとした態度で答える。


「いや、さっきの事」


「何?」

 態度が変わらない。


「だから、俺もが好きだよ」


「え、ほんと?」

 一瞬で態度を変えたが、山村は何故か頬を赤らめている。


「え?あ、うん」

 今まで白身派にしか出会わなかったのか?


「えへへへ嬉しいな」

 少し恥ずかしそうに言う山村。


「嬉しい?」

 少し疑問思い訊いてみた。


「原田君に好きって言って貰えたから」

 同士を見つけたといえ、そこまで黄身派って珍しいか?


「え?今までのことが好きな人に会わなかったの?」

 確認のため 一応訊いてみることにした。


「えー、あるよ」


「あるんだ」

 相槌を打つ


「でも、私はが好きだよ」

 照れ混じりに言う、どんだけ黄身が好きなんだよ。


「やっぱり卵はだよな」

 話をまとめるために、結論をいう。


「…」

 山村は黙り込んでいる。


「え?」

 

まさかの失言に困っていると、黒髪ボブが俺に話しかけてきた。

「おい!原田、それは無いだろ?」

 話の意味がわからない、なぜ俺は貶されているのだろうか。


「え、どういうこと?」



「やまっちが『好き』って言ったのは、卵の『黄身きみ』じゃなくて、『きみ』そう、原田君を『好き』って言ったんだよ」

 本当に分からなかった俺を察したのか、説明される。


「え?俺のことが好き…」

 なんのドッキリだこれ。


「そう、原田君のことが好き」

 黒髪ボブは言うが、本当なのか…。


「俺のことが好き…」

 今までの人生で言われたことのない言葉だった。


「そう、原田君が好きです」

 ここで、山村が口を開いた。

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