陽キャの対処法

「はい、号令」

「起立、気をつけ、礼」

 大分慣れたような口調で号令をかける。

「宜しくお願いします」

 皆が揃って挨拶をする。

「ってな訳で係りを決めていきまーす」

 先生は教卓にて手をついて話す。

「楽なのがいいー」

「挨拶委員楽だぞ」

 周りがガヤガヤし始めるが、それにかまわず、先生は話を続ける。

「まずは、学級委員やりたい人」

 先生が黒板に板書して言う。

「はい」

 そう言って、手を挙げたのは、眼鏡を掛けたおさげの少女だった。

「はい、じゃあ松本さんね。男子は?」

「はーい」

 すこしの沈黙のあと、怠そうに手を挙げたのはすこし強面の男だった。

「はい、小林君ね」

 彼は怠そうに椅子に座っている。

(やる気あるのか…)


「はい、じゃあ次は…」

「文化委員」

「はい」

 返事をしたのは山村だ、何故かこちらをチラチラ見ている気もする…。

「はい、じゃあ山村さんね、男子は…」

 しばらく経っても、誰も手を挙げないので先生は「推薦でもいい」と言った、そしたら。

「はい、原田くんがいいと思います」

 山村は俺を指名した。突然の出来事で驚いていると

「はい、じゃあ原田くんね」

「え、あ、う、その、はい…、」

 何処どこからか小声で「早しろよ…」と言うのが聞こえたので了解してしまった。


「一緒の委員会だねー」

 山村が笑顔で話しかけてくる。

「そだね」

(お前が推薦したくせに)そう思いながら適当に対応した。

「ね、何で原田君っていつも一人なの?」

「ぶほぉ」

 陰キャ殺しの質問をぶつけてくる。

「え?、何でって…それ普通に訊く?」

 言い方が強かったのか山村は謝ってきた。

「え、あ、ごめんね」

「え、あ、うん」

 謝られた時の対応が分からないのが、最近の悩みである。


「ねぇ?原田君って彼女とか居るの?」

「くぁwせdrftgyふじこlp、え?」

 唐突に言わて、すこしキョドる

「だーかーらー、彼女とかいるの?」

「え、あ、いないよ」

 見栄を張るのは良くないと思い、即答しまった。

「よかったー」

 山村は安堵したように息を吐いた。

「よかった?」

 気になって思わず訊いてしまった。

「え、あわ、あわわわ、」

 彼女はあわあわして、テンパってる様だ。


「彼女とかいたら、私と一緒の委員会で付き合ってるとか言われて、だから、浮気だー、とか言われないかなと思ったから」

 

 両手を振りながら言っているので、意味が理解しにくいが、言いたい事は何となく分かる気がする。

 ここでチャイムがなり一時間目は終わりを迎えた。

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