令和(本編はフィクションです。もう一度言います、フィクションです。全く、関係がありません。似た名前を知っていたのであればそれは、たまたまです。最後にもう一度、フィクションです。)
ハトドケイ
統一戦争
プロローグ
「新元号は、令和、令和であります。」
この言葉を聞くために俺たちはどれほどの犠牲と代償を払ってきたのだろう。
新しい王になるためには必要であったことだったのかもしれないが、この身1つで受け止めるには大きすぎたものであったことは違いない。
1
時は、平成30年。
世界の隅の大陸で、大戦争が起きていた。
その大陸の名は黄金大陸。
その大陸を収める国、平成の王の一言から戦争は始まった。
「来年、この国の王を退き次の王にこの大陸の全てを任せることにした。」
それは、王の後継者をめぐる戦争であった。
「そして、その後継者は、この大陸にある六つの地域。英弘(えいこう)、広至(こうし)、令和(れいわ)、久化(きゅうか)、万和(ばんな)、万保(ばんぽう)、この地を収める者の中から選ぶとする。」
この大陸を収めるというのは、六つの地域を全て統一するということである。
それ即ち、他五つの王を討ち頂点に立ったものが、新時代の統一者である。
2
元号大陸の最大勢力は行至である。
大陸の北の全てと東側を支配している。
ついで、、万保である。
万保は西側を支配している。しかし、北と南は広至と英弘に挟まれている。
少し出てきたが、三番目が英弘がである。
英弘は南を支配している。
そして、万和が大陸の中心に位置する。
平成王の居住もこの中にある。
範囲的な力は少ないが、後ろ盾に平成がついているので力は強い。
万和の東に久化がある。
ここは、広至と英弘、令和、万和に囲まれている。
最後に、大陸の右下、英弘、広至、久化、海に囲まれた、最小国。
令和が位置する。
四角に近い形のこの大陸で、最小で最弱の令和が勝つまでの戦争期を人は、令和統一戦争と呼んだ。
3
令和の首都令和にて。
「王よ、どうなさるおつもりですか?」
「いや、何考えたって無理だろ。令和だよ令和。勝てるわけないだろ。さっさと広至と同盟組んでさ、久化と英弘の侵略だけ凌いで、広至が統一するのを待とう。それが1番だって。」
「王よ、勝つ気は無いのですか?」
「勝ちたいかどうかよりも、俺は国民を第一に考えているの。戦えとか言うけど、結局戦うのは俺やお前でもない。そんなのおかしいと思わないか?」
「確かにそうですが、それが戦争というものなのです。」
「分かってるよ。でも、やっぱり戦わない。どう考えても、俺たちが勝てそうな国は他にない。なあ、久(きゅう)ちゃん。」
そう言って、俺は自分の右にいる。男を見る。
「その言い方はやめてくださいよ。」
「本当に私たちが勝てそうな国はないのですか?」
俺たちが少し和んでいるのもお構いなくジジイは聞いてきた。
「まあ、ない事もありませんが。基本的には無理ですね。軍略家としても、諦める方が得策かと。」
「ない事もないと言うのはどういう事ですか?」
「そのままの意味ですよ。一万回に一回くらいは勝てそうな国という事です。」
「おいおい、そんなの誰がやるんだよ。うちの最年少天才軍師様が一万回に一回って。ほとんど負け戦じゃねーか。」
そんな俺の言葉なんて聞こえてないのか、ジジイはさらに聞き続ける。
「その国とはどこですか?」
「万保です。」
「な、何故万保なのですか?正直勝てる気がしないのですが。」
「はい、そうです。普通に戦っても絶対に勝てません。しかし…」
ドンドンドン
扉が鳴り、その方向を見ると何やら慌ただしい者がいた。
「ご報告でございます。」
「何ごとだ!ここは王の間であるぞ!」
「申し訳ありません。しかし、ことは重大なのです。」
「何だ言ってみろ。」
「はっ。先程広至と英弘が同盟を組み万和を討つために出陣しました。」
「なっなんだと!平成王が宣言してからまだ1週間も立っていないぞ!早すぎる。」
「いや、その二つは強国だからいつでも戦争ができる様に準備をしていたのだろう。そこは問題じゃねえ。」
「さすが王その通りです。問題はそこじゃあない。」
「どういう事ですか?」
「広至と英弘は俺たちと同じ日系の宗派だろ?その二つが同盟を組んだという事は完全に俺たちは孤立したという事だ。」
「何故ですか?その中に令和も入れて貰えば良いのでは?」
「お前本当に馬鹿だな。令和なんてほとんど価値のない国だが、唯一ある価値は広至と英弘に挟まれているという事だ。このおかげで、広至には英弘を討つための拠点を提供するという条件で同盟を組むつもりだった。しかし、その二つが手を組んだ今令和の価値は完全に失われた。」
なんという事だ。この国の状況もだが、それを慌てる事なく客観的に分析をする王も普通ではない。
「ですが王よ、これは好機ですぞ。今なら万保を打つことができるかもしれませぬ。」
「なんだと?それはどういうことだ?」
「はい、先程万保であれば勝てるかもしれないと言いました。それは今、万保は少し前の雨の影響で全体的に力が落ちているからなのです。しかしそれでも令和より強い。故の一万分の一でした。しかし今なら、奇襲をかけることができる。うまく行けば討ち取る事も可能かと。」
「なるほどな、つまり戦争時の手薄な検問を狙って英弘に入りそのまま万保まで行き討つという事か。」
「はい。これは私の見立てですが、万保はおそらく3万の兵を出してきたら多い方でしょう。」
「分かった。では、令和は5万の兵で出陣をする。出発は明日の朝。日が上り次第出発する。」
「「はっ。」」
こうして俺たちは最小国でありながら、戦争に参加する。
4
令和から万保までは8日ほどかかる。
本来であればそれほどの時間はかからないのだが、今回は英弘にバレずに行くためにまわりみちをすることにしたのである。
英弘には南北に分ける山脈が存在する。
この山脈より北側に首都を置き貴族などが生活をしている。
対称的に南側はほとんどが農村であり、北側と比べると貧しい生活をしている。
そして今回令和軍が通っているのは山脈である。
300kmほどの山脈を歩いているのだ、食料や武器などを持ちながらの山は想像に容易いが過酷であった。
しかし、根をあげるものはいても諦めるものはいなかった。
これは令和の王が民から愛されていることとその強さを証明する様なものだった。
4日目の夜順調に進みちょうど半分くらいのところまで来た。
「久様本当にこられて良かったのですか?久様の頭の良さとひらめきには信頼をしておりますが、戦いの時に守りながら戦うというのは不可能ではありませんが保証はできませんぞ。」
「構わない。それも覚悟の上だ。令和が勝つ為には万保は必ず必要なんだ、死んでも取る必要がある。その為に俺は直接、指揮を取りにきたのだ。」
「そうですか…分かりました。この老いぼれの命で必ず守って見せましょう。」
「ああ、だがお互い絶対生きて帰ろう。この梅の花に誓って。」
「はい。」
そう言って2人は、お互いの鎧にある梅の花の装飾品を触れ合った。
令和の国教は『万葉』と呼ばれる日系宗教である。そして国民は聖典『万葉集』とそのシンボルである梅の花を信仰している。
特にシンボルである梅の花には思いが強く、先ほどのお互いの梅の花を触るという行為は命を預け合うという意味が含まれている。
5日の朝出発の支度をしていた令和軍にある知らせが届く。
それは、令和にいる王からのものだった。
「久様、王からの手紙です。」
「何?今すぐみせよ!」
手紙を持ってきたのは国で一番の足を持つ足利(あしかが)というものであった。
王が彼をこのタイミングで寄越すというのは、相当重要だと久は考える。
手紙の内容は、ただ一文。
『英弘の王が万和と広至によって殺された。』
ただそれだけだったが、全てを察した。
おそらく、広至が裏切り万和と手を組み英弘を討ったのだろう。
ここで、久には二つの選択肢から一つを選ぶ必要がある。
一つは令和に戻る事である。広至と万和がそのまま令和を狙わないとも限らない。いや、その可能性は大いにあるだろう。
兵のほとんどが久に退却命令を求めた。しかし、久は退却命令を出すことはなかった。
もう一つの選択肢を選んだのだ。それは、このまま万保を討ちにいくということである。
みんなが反対をしたが、久には考えがあった。
「いいか、お前ら。今俺たちが戻っても広至と万和に瞬殺されるだろう。しかし、令和には沢山の秘密のルートがある。それを使っておそらく王は逃げるだろう。そしてその先は万保だ。なぜなら、俺たちが万保を討ち取ったと信じているからだ。俺たちが本当に王を助けたいのであれば、万保を討つのが最優先だと思う。だから、来てくれないか?」
最年少天才軍略家の久は頭を下げた。
5
久の予想は外れた。
久は最初から広至と万和が手を組んでいると判断をしたのだが、実際はそうではなかった。
広至として英弘が欲しかったのも事実ではあるが、それよりも万和の方が脅威であった。
故に初めは討伐をするつもりであったが、予想以上に万和は強かった。
万和が強い理由として一番の理由は、平成兵の存在である。
平成と万和はお互い漢系の宗教を信仰しているだけではなく、同じ『史記』という聖典を持つ宗教なので、平成としては万和に勝って欲しいのである。
その為に平成兵を惜しげもなく提供した。
そして、この状況をまずいと判断した広至は万和に対して同盟を持ちかけた。
通常日系宗教と漢系宗教が同盟を組むというのはあり得ないことなのだが、広至は『日本書紀』とは別に、『詩経』という漢系の聖典もあり、この2つの聖典によって成り立っている宗教なのである。
そうして、英弘を討ったのだが1つ大きな問題が浮上した。
これが、どちらの国も令和に攻めてこなかった理由である。
それは、英弘の土地をどうするかということである。
広至としては、英弘の土地を入手すると、すべての国の北側と南側に位置することとなりこの戦争において圧倒的優位な立場に立つことができる。
しかしそんなことは猿でもわかるので、当然万和もそれだけは避けたかった。
そこで、万和は英弘の全権利を主張したのである。
万和が英弘の全てを手にすると、令和や万保をすぐに落とすことが可能になる。そしてその規模の国と戦ったとしても広至が勝つことはできないと考えた。
よって、広至はその主張をには答えず、逆に全権を主張したのである。
当然、お互い譲るはずもなくそのまま英弘で戦争が行われた。
平成兵を持つ万和の勝ちだと誰もが思っていたが、この戦争は2週間近くにも及ぶ長期戦となった。
その理由としては、平成兵が少なすぎるということである。
なぜ少ないのかというと、英弘との戦いで多く失ってしまったからである。
戦争時の死因は様々だが味方の矢にあたりしんでしまったというのも少なくない。
あの矢の雨の中である、当たっても仕方がない。
しかし、平成兵の死因の約9割が味方の矢であるというのは流石に不自然である。
なぜそんなことが起きたのか、それは当然広至によるものである。
広至は英弘と戦いながら、万和といつでも戦えるように兵の数を減らしたのである。
よって万和は苦しい戦いを強いられたが、広至と比べると、英弘までの距離は近いので平成兵を援軍として送ったこともあり、結果として長い戦争になってしまった。
最後は、英弘にいる兵を全て殺しそのまま王の下まで行き、殺した広至の勝利であった。
しかし、その時すでに令和は万保を制圧しさらに、英弘の北で戦争をしている間に南側全てを令和陣営へ引き込むことに成功した。
6
万保を制圧するのに大したことはなかった。
なんの準備も予想もしていない国の王を殺すことほど簡単なことはない。
しかし、英弘の南側を陣営に引き込むのにはあるカラクリがある。
それは偶然が重なってできたものだったが、その偶然こそが真の新の王に必要な素質だったのかもしれない。
このことが起きたことにおいて1番重要なのは英弘で広至と万和が戦争を起こしたことである。
戦争が起きた2日後には令和は万保を制圧していた。
そして、それから5日間の間にほぼすべての英弘の国民が令和と万保に亡命してきたのだ。
そして、その全てを令和の王と久は受け入れたのである。
そして、足利を使いお互いの状況を報告しあった。
足利はわずか3日で3往復をしたのである。足から血を流しながら。
しかし、今回足利がいなければ令和は王と久の意思の疎通ができず広至に侵略されるところであった。
よって、足利には身分と領地そして名が与えられた。
足利というのは足が速いためにそう言われただけであったが、正式に名前となった。
足利は足利 若月(あしかが わかづき)となった。
領地は最初令和内にと考えたのだが、なにぶん令和は狭く空きがなかった、故に少し待ってもらうことにしたが、足利は文句の1つも言わなかった。
足利によって運ばれた手紙の内容を要約するとこんな感じである。
「英弘人を令和で全員受け入れまーす。」
「マジで?俺もちょうど万保で英弘人を受け入れたところだわ。気があうね。」
「この後どうする?」
「流石に3カ国分の人間を2カ国では収まらんだろ。そうだ!英弘の南って空いてんじゃね?」
「あーそれありえるわ。どうせあいつら北でしか戦争しないんだし、今のうちに取っとくか。」
「おk。」
この最後の手紙が令和の王に届いたのは広至と万和が戦争を始めてから僅か5日後であった。
この迅速な行動により、戦争が終わるまでの9日間で英弘の南に砦を立てることができたのである。
7
広至は完全に失敗をした。
何よりも先に令和と手を組むべきだったのである。
はじめに、万和を討とうなんて思わずに…
令和は国の面積は小さいが、王の民からの信頼は何処よりも厚かった。
それは、小国だからというのもあるのだろうが、やはり王の人柄であろう。
できない人間は5人の人間から信頼を得るのだって難しい。
そしてその王のおかげか、良い人材が令和には揃っている。
軍師の久や伝達屋の足利、他にも武器の性能や建物の耐久性食文化の発展など、明らかに令和はほかの国より発展していた。
そんなことは戦いになれば関係ない。そう思っていた自分を殴ってやりたい。
強い人間を作り上げるのに役10年はかかるだろう。
しかし戦争になればそんな命が虫けらのように殺される。
令和は強い武器を作るのに10年もかかっていないだろう。
その武器を使い自分より格上の相手に負け、死んだとしても武器は残り続ける。
人間の強さには個体差が生じるが、武器には存在しない。
もちろん同じ武器を使った場合である。
強い兵が死ぬとまた10年かけて育成する必要があるが、令和は武器を渡すだけで良い。
広至が費やした10年間を令和は砦の強化に努めることができる。美味い食事を研究することができる。
人間は美味い飯を食べると、当然やる気が出る。逆に不味ければ志気はあまり上がらない。
戦争は文化を育てることで、勝つことができる。
ただ力をつければ良いという問題ではない。
仮に勝っても、そのあと残るのは無駄についた筋肉くらいである。
しかし、前者は良い文化が残る。そしてそれをさらに発展させほかの国との差をさらにつけることができる。
これが狙ったものなのか、たまたまなのかはわからないが1つ確実なことがある。
『時代は変わった。』
今までのやり方が通用しなくなってきている。
結果しか見なかった時代から、結果の先を見る時代へと明らかに変貌している。
そしてその先を見るためには、過程が必要なのである。
過程を知らず近道をしようとするとゴールにしかたどり着けない。
広至はゴールしか見えてなかった。だからこそ、ゴールにもたどり着けない。
令和は万保と英弘の南を支配している。
それは、広至にとって確実に脅威である。
そしてそれを王は認めた。
最弱国が今、最強の国の脅威となったこの瞬間は。
最強国の王が近い未来の死期を悟った瞬間であった。
8
令和の王が、久に出会ったのは13年前。齢6の時であった。
王が久化と令和の国境線の近くの村を視察をしていた時であった。
久化と令和の国境とも成っている、川の岸に1人の少年が倒れていた。
しかし、王の周りの兵は誰も助けようとしなかった。
その理由としては、身分の低そうな格好、さらに唯一着ていた布が紅梅色であったことが主な理由である。
なぜ紅梅色の服を着ていると助けない理由になるのか、それは令和では宗教上、紅梅色は神の色とされており、王族以外の人間が紅梅色のものを身につけることを禁止されている。
しかし、この明らかに身分の低いであろう子供が紅梅色の布をまとっている理由。
それは、久化の人間であるからである。
故に誰も手を指し伸ばそうとは考えなかった。
しかし、王は違った。
自分しか見にまとうことの許されていない色の布を纏っている身分の低いであろう異国の子供に対してこう言い切った。
「この者は、令和の領地にいる。つまり領民である。そして、王である私は領民に対して分け隔てなく接する義務がある。親がおらず体が衰弱しているであろう人間に対して、医者を与えるのは人間の義務である。飢えを知り、餓死しそうな者に食料を与えるのは命あるのもの義務である。故に私はこの者に医者を与え、食事を振る舞う。そして、この国の教育を施す。異論がある者は今言え。」
当然反論なんて誰もできなかった。
齢6にしてのこの発言。
近くにいた兵と村の人間は、この方がいずれこの大陸全ての王になることをまるで、決まった事実かのように受け止めた。
明確に見えたのである。将来、この王がこの大陸を統一する姿が。
その少年は、医者に診てもらい食事を食べた。
体調的な部分に問題は一切なかった。
しかし、記憶を失っていた。
そこで、背丈から王と同じ歳だと推定し久化の人間であるということで、久と名付けられた。
令和で教育を受けさせてもらった。
これが久の人生において一番の幸運であった。
なぜなら、そこで久の軍師としての才能を見出すことができたからである。
対称的に王は情の強いものであったので、頭より先に体が動くような人であった。
故に2人の相性は最高でだった。
そのおかげで、今令和は大陸最強国の広至の脅威にまで登り詰めた。
9
広至が万和の王を討ち取ってから令和の行動は早かった。
わずか1日でまだ万和に滞在している広至兵を殲滅しにかかったのだ。
度重なる戦争で疲労を隠しきれなくなってきた広至軍では全く疲れのない令和軍と身内を殺された恨みを持つ英弘軍のは天と地ほどの力の差があった。
一方的な暴力にも見えるその戦争は翌日、英弘軍の軍長が令和の王の名の下に広至の王の首をはねたことで、終了した。
これにより、令和は久化以外のすべての国を制圧したのであった。
次の日、令和にてパーティーが行われた。
そして、今回の戦争で英弘を手にすることができたので、足利へ領地を与えることにした。
北側をあげるつもりだったのだが、本人の希望により南側すべてを足利の領地とすることが決まった。
足利は戦争前に南側の人々と共に砦を作っていた。
その時仲良くなったものたちの今の生活の現状を聞き、それを良くするために自分自らそこの領主になることを決意した。
そこに元々住んでいたものたちも足利であれば大歓迎だといっていた。
彼はいずれ良い領主になるだろうよ誰もが確信していた。
そのあとは、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎであった。
しかしそこに、王と久の姿はなかった。
2人は王の部屋のベランダにいた。
「久しぶりだな久。」
「久しぶりって言ったって、2週間だろ?ガキじゃないんだしそんな離れてたわけじゃないだろうが。」
「確かにな、でも俺たちずっといっしょにいただろ?お前と出会ってからの12年間半日以上会わない日はなかった。それが急に2週間も会えなかったんだ、少し寂しくてな。」
「その気持ちは俺にもわかる。さっきお前の顔を見た時すごくホッとした。お前が生きてる。まだ一緒に居られるってな。」
「なんだよそれ、まあ、わからなくもないけどさ。俺たちは少し、死人を見過ぎたのかもしれないな。」
「それはあるかもな。たまに生きてるのが変だと感じる時がある。」
「そらまた極端だな。」
それから2人は他愛もない話を続けた。そして夜が明けようとしていた。
「なあ、久お前は本当にいいのか?」
「次に久化を責めることなら、問題ない。俺は令和のために生きる。12年前にお前に助けられたときからそう決めているんだ。」
「分かった。じゃあ、久。これからも俺と共に戦おうな。」
「ああ。勿論だ。」
その時朝日は、2人の未来を照らすかのように光っていた。
10
久化は、平成の後の王を決める宣言を聞いてから一度も戦争をしていない。
それは、久化が軍を持たない国家であるからである。
この大陸を統べる王になるためには軍が必要である。
しかし、久化の王は自分が大陸の王にならない代わりに戦争を行わないことを宣言していた。
故に常に中立国であった。
今回令和の王も久化以外の国をすべて制圧したので、久化の王の下へ行き話し合いで降伏をしてもらうつもりである。
だが、王が久化についた時明らかに異変が起きていた。
久化の人間が虐殺されていた。
そして、旗が立っていた。その旗にはこう書かれていた。
『内平かに外成る。』
『地平かに天成る』
この旗に書かれているのは、平成軍のものである。
「全軍に通達する。久化内にいる平成軍を見つけ次第殺せ。捕虜のための生け捕りなどは一切必要ない。」
王はそう言って、走り出した。
それは、久化の王の安否を知るためであった。
王が平成兵を殺す許可が出てから約2時間で200以上の平成兵を殺した。
平成兵は一人一人は強いが1対5など数で押し切れば戦えない相手ではなかった。
人の命を大切に思う王が今回このような指示を出したのには理由があった。
いくら優しい人といえど流石に戦争で人を殺すものに対して殺意は湧かない。
それが女とか子供とかは関係がない。覚悟を決めたのであれば、女でも子供でも殺されても殺した人間を殺すほど憎むことはない。
だが、覚悟を決めていない明らかな民間人を殺す理由は絶対に存在しないのである。
故に王は平成兵を殺すことを決断した。
平成兵の死体が300を越す頃にやっと久化の中心についた。
中心の都はまだ平成兵に攻められてはいなかった。
しかし、警戒態勢を取っていた。
町の住人は皆避難をしていた。
「王、待ってくださいよ。」
王に遅れて、久も辿りついた。
「遅い。行くぞ。」
そう言って、久化の城に入っていく王に久はついていった。
王の間に着き、中に入ると老婆と王がいるであろう場所があった。
なぜそんな言い方をするのかと言うと、簾のようなもので隠れておりそこに王がいるかは判断がつかなかったからである。
「久化の王よ、令和の王である。降伏をしていただけないだろうか。そうすれば、今来ている平成兵もすべて、我らが討ち取って見せます。」
しかし、久化の王の返事はなかった。
そのかわり、老婆が口を開いた。
「あなた様は、令和の王であったか。あの最小国がよく、ここまで。見事としか言いようがありません。そこで、1つ残酷なことをお教えしよう。」
「なんだ?」
「この中に王はいない。」
「なんだと!それでは今どこにいるのだ。」
老婆が嘘をついている可能性もあるので、簾の奥に行ったが本当に誰もいなかった。あるのは木の人形くらいである。
「安心してくだされ、あなたの気持ちは、王に届いて追います。」
「何を言っている?使いでも出したのか?」
「いえそんな事はございません。王はここにおられます。あなたのすぐ後ろに。」
「なんのつもりで時間を稼ぎたいのかはわからんが、もう付き合っていられない。俺の後ろには久しかいないではないか。」
そこまで言うと、流石の王も理解をした。
そして、久自身も昔の記憶を思い出す。
「お前が、王だと言うのか?」
「ああ、そうみたいだな。今完全に思い出した。」
そのあと、なぜ久は国を出たのか、なぜあの川の近くにいたのかすべて話してくれたが、正直1つも覚えていない。
ただ1つ覚えているのは、久の処刑がその日の2日後に執り行うと言う事である。
本来であれば、話し合いだけでよかったのだが久と王は親しくなりすぎてしまった。
故にこれから、平等に扱うことができないと久自身が判断し、自分を殺すことを条件に令和への完全降伏を認めたのであった。
処刑は、前王の前で行われることとなった。
「令和の王よ、いや黄金大陸の王よ、覚悟を決めてください。そんな震えた手では僕の首を綺麗に割くことはできませんよ。痛いのは嫌なのです。」
王は、この役目を誰にも譲らなかった。
どうしても自分でする必要があると思ったからである。
それが、この大陸を背負う自分自身への覚悟であった。
そして、王の手の震えは止まった。
定規で描いた線のように綺麗な一本の線を描きながら剣を振り下ろした。
そしてその瞬間から、次の王は令和の王と決まったのである。
この作品は、フィクションです。(真剣)
令和(本編はフィクションです。もう一度言います、フィクションです。全く、関係がありません。似た名前を知っていたのであればそれは、たまたまです。最後にもう一度、フィクションです。) ハトドケイ @hatodokei
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