第二話:神との邂逅。
夜も更けて辺りは闇に包まれた。
城門前の衛兵以外が寝静まった頃、彼女は動き出す。
あの子が見つけた地下の遺跡には、何かがある。
あの妙な卵の事も気になるが、彼女にはそれよりももっと気になる事があった。
財宝の山は、本当に金品だけだろうか?
きっと他に、まだ何かがある。
彼女は最低限の明かりを用意する為に魔法で手元に明かりを灯す。
遺跡に入るまでは光源を少なくして誰にも見つからないようにしなくては。
細心の注意を払い、自室から遺跡の入り口までの道を進む。
深夜ともなると少し肌寒く感じ、寝間着のまま来たのは失敗だったなと感じながらも魔法で自分の周りの空気だけを温める。
加減が難しい魔法だが、彼女にとってその程度は容易い事だった。
身を屈めながらこっそりと進み、やがてその入り口が見えてくる。
入り口は再び塞がっていて、そこへ彼女はペンダントを触れさせる。
赤い発光の後、足元の地面が消えた。
確かにこれは気を付けないとそのまま階段の下へ転げ落ちてしまいそうだ。
そんな事を思いながらゆっくりと階段を下ると、魔法の明かりをもっと強くする。
もうそこまで気を遣う事も無いだろうと判断した為だ。
彼女は通路を進み、その先の財宝庫へたどり着くと、明かりを天井付近に固定し、財宝の山を漁り始めた。
しかし、膨大な量の金細工や宝石が散りばめられた宝剣などの中から必要な物を見つける作業は困難を極める。
しかもそれは有るとは限らない物なのだ。
一日目はそのまま時間切れとなり自室へと引き返す事になる。
「あの子の事もきちんと監視してないといけないわね……」
彼女はそう呟きながら眠りについた。
翌日も、翌々日も彼女の探し物は見つからない。
もしかしたら彼女が探している物などここにはないのかもしれない。
そう諦めかけた頃だった。
疲れて寄り掛かった壁に、不自然な窪みを見つける。
もしやと思いそこへロザリアストーンを押し当てると、赤く発光した後、さらなる通路が開かれた。
「……ふふっ。見つからない筈だわ」
今までの時間が無駄になったとは思っていなかった。
彼女は、一刻も早く探している物を見つけたかったが、焦ってはいなかった。
あるかどうかも分からない物を探そうと言うのだから時間がかかって当然。
そう思う心のゆとりを持ち合わせていた。
「ずっと、ずっと待っていたんですもの。どれだけ時間がかかろうと、諦めたりはしない」
それだけの信念を抱え、自分の願いを叶える為に、それだけの為に生きてきたのだから今更少しばかり余計に時間がかかる事など構わなかった。
そして、彼女の諦めない心が、その先の道を開いたのだ。
新しい通路は明かりが全くなく、真っ暗だった為、天井に固定していた明かりを手元に呼び戻し先へ進む。
明らかに人工的なその通路は、しかし人の手で作れるとは思えない程美しく滑らかな加工を施されていた。
明かりを近づけるとうっすら緑色をしている。
まるでこういう宝石を削り出して通路にしたような、そんな美しさと艶やかさのある通路だ。
辺りをきちんと観察しながら進むと、唐突に道が途絶え、今度は白銀の扉が目の前を塞ぐ。
そして、その扉にも当然、小さな窪みが付いていた。
彼女がロザリアストーンを触れさせると、発光の後扉が消滅。
開くのではなく消滅するあたり入り口の地面に似ていた。
『おや、お客さんとは珍しい』
若者とも老人とも判別のつかぬ声が響き、彼女の肩が震える。
恐怖に、ではない。
歓喜に打ち震えたのだ。
「貴方は……一体何者なのかしら? とても人間には見えないけれど」
そう、そこにあるのは人の頭より少し大きいくらいの水晶玉のような物。
祭壇のような物があり、そこに安置されている。
水晶の中心は紫色に淡い光を放っていて、とても美しく、この世の物とは思えない程だった。
『私は……そうだねぇ。君たちに分かりやすく言うのならば……悪魔、かな』
彼女は再び歓喜に打ち震えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます