ビーチフラッグ選手権・CM撮影
『Aチーム』
全世界に配信される『ありゃまTV』の突発企画、『ビーチフラッグ選手権』。『はねっこ』達にとってははじめての大きな賞レース。負けるわけにはいかない。CM撮影に集まった出場チームは4つ。安田大五郎氏、どっから集めてきたの! 仕事が早い!
Aチームは橋系アイドルユニット連合。HJR84やMNS84など、13ものアイドルユニットには、総勢668名のアイドルが所属している。俺達にとっては因縁あるIZM84のリーダー、『よねちゃん』はこのチームにいる。決して負けたくはない。総合プロデューサーの春本清氏、相当儲けているらしい。うらやましい。いつか俺だって……。国内世論調査による下馬評は断トツの第1位。ここ日本での人気は絶大なものがある。居並ぶメンバーは俺の知る限り、みんな美形。しかもお手入れ上手で、『おしゃれ番長』という野暮な表現でさえ、彼女達が使うとかわいく感じてしまう。そこが憎い。いや、憎めない! 今回参加するチームの中では、最も歴史があるというのも大切な要素だ。何と、平成時代から活動を継続しているんだって。すご過ぎる! そういえば、『よねちゃん』のお母さんって、橋系の初期メンバーの1人らしい。最早相撲部屋のような格式まで備わっている。CDの販売枚数も桁違いのトップ。グループ類型で年間5000万枚以上というのをかれこれ15年も続けている。すご過ぎる! しかも、CDには色々なおまけが付いているらしい。俺は3つしか買ったことがないけど、たしかCDのおまけに握手券が付いていた。他にも写メ券、ハグ券、ハイタッチ券、サイン券、肩叩き券が付く場合もあるらしい。クラスで1番よりちょっとだけ斜め上の存在というだけあって、個性的なメンバーが揃っている。かわいいにプラスされる要素としては、エロい、キモい、カッコイい、エモい、大食い、歌うま、褒めうま、など多岐に渡る。俺が握手会に参加した『さなちゃん』は、褒めうまエモかわで神対応だと評判だった。そんな『さなちゃん』もこの企画に参加するみたいだから、再会して恋に落ちちゃったらどうしよう! 俺としては何の問題もないんだけどね。
CMは、各チームのキャプテンが、互いの健闘を祈念するという選手宣誓風のものらしい。チームAキャプテンは真田雪、あの『さなちゃん』だ!
ー宣誓! 私達チームAは、どっーんなに苦しくても、どんなに困難でも、辛く、ともっ、持ち前の明るさで笑顔を絶やさぁーず、アイドルとして勝利を目指し最後まで闘い、頑張り、乗り越えることを、観客の皆さーん、そして『ありゃまTV』をご覧の世界中の皆さんの前で、ここに誓います!ー
辛く、ともっのときなんかは、泣き真似みたいのを入れたり、勝利を目指しのときは前のめりになって拳を握ってたり、誓いますのときはちゃんと顎を引いて顔を引き締めたりと、細かな工夫がアイドルっぽい。俺は嫌いじゃないけど、『はねっこ』が負けるわけにはいかない!
『Bチーム』
つよおおきい『Aチーム』に対して、あえて大きくならずにアイドル本来の良さを凝縮してお届けするをコンセプトに運営されているのが、『さくら色純情覆面少女組』。今大会ではBチームとして出場する。侮れないチームだ。メンバーが直ぐ不祥事を起こして辞めてしまうから常にフレッシュだと評判の高いユニットだ。総勢は、昨日までが127名だけど、今日は113名にまで減った。理由は、集団食中毒らしい。名門私立お嬢様学校の特別待遇クラスの女の子というモチーフがあるらしく、意外なほどの高学歴アイドルとしても有名だ。東大生が2人、慶大生が5人、早大生が8人もいる。すごい。一方で中卒っす! という地方出身者もいるみたいで、都内の寮には研究生も含めて70人以上が共同生活を送っているらしい。その寮の狭さたるやが有名で、俺家の半分の広さしかないらしい。一緒に住みたいと願うファンもいて、その願望を叶えるために女子寮見学ツアー券を8万円で販売した時は話題になった。28枚売れたらしい。宿泊券は2食付き800万円で、こちらは今のところ売れていないみたい。買おうかな⁉︎ 過小評価されていると言われることが多い。原因は、CDの販売に無頓着なことが挙げられる。だから、彼女達の一般の知名度は相当低い。けど、だからこそ繰り出せる捨て身の攻撃は、橋系アイドルを相手にしてこそ輝くだろうと考えているファンも少なからずいる。
CM取りに参加したのは4人で、現役東大生の『ぽんぽん』、現役慶大生の『あや』、現役早大生の『しらぬい』、今大会最年少で中2の『あずき』。知名度の高い3人と、無名の新人の組み合わせ。キャスティングはよく考えてるよな。参考になる。けど、全然選手宣誓風じゃない! これって……。
「おい、チームA! 分かってんのか。お前ら、叩きのめすぞコノヤロウ!」
「それから、チームC! 金魚が擬人化? ふざけてんのかてめーら、コノアマァ!」
「チームD! 誰だ? てめーよぉ、誰も知らないのにしゃしゃり出てくんじゃねーよ!」
「私達、『さくら色純情覆面少女組』は、毎日18時と21時の2回、入場2500円+1Dで、秋葉原クラブUDにて公演してます。遊びに来てねー! バイバーイ!」
行く行く。俺、絶対行く! けど、日供祭があるから無理かも……。このチームのプロデューサーって、元ホストっていう噂があるけど、演出が上手い。面白そう!
『チームD』
チームCが『はねっこ』なんだけど、先にチームDを紹介しておこうと思ったんだけど、そうはいかないんだ。結成したのが一昨日で、この大会がお披露目なんだって。だから、ふつうにホームページやツブヤイッターのタイムラインに記されていること以外は、全く分からないんだ。正式なユニット名は福を招く猫が擬人化した修道シスターアイドル『まねっこ』! どこかで聞いたことがある……。総合プロデューサーのプロフィールも見てみよう。なになに、20年務めた仕事も家も全部息子に託して出た諸国漫遊の途中に立ち寄った小さな教会で神の啓示を受けアイドルユニットを結成することにし43歳(自称)『マスカレードの主宰者』と呼んで欲しい。だって。えっ? これ、親父なんじゃないの! 俺の親父、光龍大社の前宮司は、鱒魚介奴と書いて、『ますかれいど』って読むんだ。小さな教会って何だ? 漆黒の闇がいるところのこと? 戦慄が走った。
結成メンバーは全部で7人。その全員が出演してのCM撮影となった。豪華だ! なんて豪華なんだ!
「宣誓!」
「我々」
「『ビーチフラッグ選手権』の」
「選手一同は」
「スポーツマンシップに則り」
「正々、堂々」
「戦うことを、っのっ」
「誓うにゃん!」
「誓いまし、ゃん!」
昭和だ。最後は全員で言うとこなんかは、唱和だ。コンセプトに忠実なのは最後だけ。けど、1人間違えてる。誰だ、あいつ? 誤魔化せたつもりみたい。ドヤ顔してる。けど、名前が分かんないよ! 笑話で終わらせるつもりかも! 小話にもなってないのに!
俺の頭の中には、様々な謎が浮き彫りになったりぼやけたりしている。
『チームC』
言わずもがなの、我らが『はねっこ』さん。大きな賞レースに出場するとあって、みんな張り切ってる。真面目にアイドルしてくれてる。
キャスティングは、ほんと迷う。誰が良いのかなぁ
あおいは元子役でファンも多いからありって思ったけど、まないのタライがないと笑いが取れない。少し固いところがあるんで、却下。
まないもまないで、女神様だから出来ることはたくさんあるけど、これという決め手がない。極振りに弱いバランス型。最後の切り札にしたいんで、却下。
あゆみはどうだろう。まずどんな衣装で登場させるかで迷う。途中で着替えられるようなら面白いかもしれない。けど、生着替えコーナーはないんで、却下。
まことは大器晩成型だと思う。成長速度が遅いから現時点では後塵を拝することが多いけど、大切に育ててあげたいんだよな。現状を鑑みて、却下。
しいかって、反抗期? なんだけど、割としたたかなところがあって、個人技で戦局を逆転させるのは期待したら駄目な子だと思う。まことと同様の理由にて、却下。
アイリス! 爆乳だし、水着が映えるからありかも。けど本戦に出場させると持ち前の真面目さからかえってラッキースケベを発動しちゃいそう。危ないんで、却下。
優姫もバランス型かもしれない。まないほど達観してないけど、水槽の中にいる頃から周りを使うのは上手かった。ソロデビューはまだ早いんで、却下。
となると、残るはこいつしかいないんだよな。
「まりえ、行って来い!」
「マスターがそういうなら、行くね!」
というわけで、『はねっこ』代表はまりえに決定。
「宣誓! みなさーん。頑張るからー! 応援、よろしくー!」
大分尺が余ったみたいだけど、『ありゃまTV』の編集ってすごい! カメラを4台も用意してくれた意味が分かったよ。編集さん、GJだよ。『よろしくー!』で流行語大賞が狙えるんじゃないかっていうレベルですごい!
いよいよ明日・明後日『ビーチフラッグ選手権』頑張るからー!
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