あおいさん

 はじめにその声を聞いたとき、俺はおばけじゃないかと思った。それほど恨めしいという怨念がこもっている。


「ねぇ、まりえ。何か忘れてない?」


 よく聞くと、あおいさんの声だ。まりえが来ないので、大社に戻ったり待ち合わせ場所に行ったりを繰り返していたみたい。けど、まりえだけでなく俺も他の巫女達も誰もいなくって途方に暮れていたんだって。スマホで連絡を入れたけど、俺もあゆみさんもアイリスさんも気付かなかった。ちょうど店が忙しくなっていたんだ。それでも探し回って、ようやく皆の笑い声のする『ぶくぶく堂』にたどり着いたんだ。


「きゃー、おばけ!」

「人を待たせておいて、おばけって。許さないからー!」

「マッ、マスター! 助けてー!」


 まりえの声が『ぶくぶく堂』の店内にこだまする。それからの『ぶくぶく堂』は、常連客を増やしていき、人気店として繁盛する。『ぶくぶく堂』再生計画は成功し、まりえの抱えている問題は解決する。だが、まりえの抱いている、忘れっぽいという問題を解決するには、もう少しだけ時間がかかりそうだ。


(日供祭を忘れるとは、不届きなのじゃ)

(本当に申し訳ございません)

(じゃが、『ぶくぶく堂』のたい焼きは美味なのじゃ)


 光龍様は喜んでくれ、まりえの抱えている問題も解決、『ぶくぶく堂』は繁盛! めでたしめでたし!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る