擬人化

 優姫とあゆみさんがまりえを介抱している間、俺は金魚を擬人化したものの正体について考えていた。


(そなたが無自覚なだけなのじゃ)

(あっ、光龍様!)


 声に出したわけではないが、その思念が光龍様に届いているのを感じる。


(そなたの発光体質は、魚を擬人化するのじゃ)

(じゃあ、俺が原因でまりえ達は!)

(その通りなのじゃ)


 念願叶い、金魚達と会話ができるようになった。けどそれは、俺自身のコンプレックスである、発光体質によってもたらされた。不思議な光の能力、恐るべし。


(ま、今日のところはグッジョブなのじゃ)

(ありがとうございます。ですが、くじ引きの番号は?)

(それなら問題ないのじゃ。水槽の中を見るのじゃ)


 光龍様に促されて、俺はそっと水槽を覗いてみた。そこには今まで悠々と泳いでいた金魚達の姿はない。代わりにあるものは、何と、4枚の木札! 波間に漂っている。俺が光ったときのドタバタで、棚の上段から落ちたみたい。まりえ達は木札の持ち主として認定される。こんな偶然、中々ないよね! いや、偶然というより、全て光龍様の御神威ってこと? こうして、まりえ達は光龍様によって巫女になることを許される。


「あの、鱒宮司様。私は大変なことを思い出しました」


 遠慮がちに俺に話しかけてきたのは、アイリスさん。意外にも巫女装束を着こなしている。気品があってマッチングー! だ。これまで気に留めなかったけど、アイリスさんはずっと不安そうにしていた。一体何を思い出したんだろう?

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