発光体質

 合格の知らせに大喜びのアイリスさん。そのままのテンションで俺に抱きつく。異国の挨拶は異性間でもこんなに接近するものなのか! ハグってやつに正直ビビった。石鹸の淡い香りを直に嗅ぐだけでもダメなのに、俺の身体を広範囲に柔らかいものが刺激する。マズイ! 一騎当千のスーパーボディーに勝手に反応する俺氏。気持ちイイー! その瞬間、ドバーッと、全身から不思議な光が放たれ、薄暗い地下室が昼間のように明るくなる。


「なっ、何この人? キモい」

「キャーッ、変態! ありえない」

「にっ、逃げろー!」


 参加者の殆どがパニックを起こし走り去っていく。そりゃそうだろう。発光体質の人なんて、見たことないだろうからな。実際には、日本人男性の40%は発光体質らしい。けどそのほとんどは、脇の下とか、鼻腔の内側とか、隠れた部分がちょっと光る程度。俺みたいに全身がLEDライトより明るく光るのは珍しい。去り行く参加者に申し訳ないと思いながらも、俺の頭は春を感じて放心する。


「マスター、しっかりして!」


 聞きたことあるようでないような声。一体誰だろう? 俺はギリギリで意識を繋ぎとめ声のする方へと虚ろな目を向ける。そこにいるのは、まりえ⁉︎ そんなはずはないという思いと、そうに違いないという確信が俺の中で混ざる。


「まっ、まりえ! どうして……。」


 さすがの俺もここまで。意識は地下室よりも暗い闇の中へと迷い込む。

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