第8話 ゴーストちゃんはテスト勉強を教える
「うーん、わからん……」
「何をやっているの?」
さっきからずっと唸っている泉くんに、私は声をかけてしまいました。目を向けるとシャープペンをペン回ししながらノートと、にらめっこしています。
「そろそろ、中間テストが始まるからテスト勉強しているんだがさっぱり解けない……」
「テストがあるなら家で勉強すればいいじゃないですか?」
「それじゃ、ゴーストちゃんに会えないでしょ!!」
「そんなに私に会いたいですか……」
「テストなんかよりゴーストちゃんに会う方が大事だ」
いつもいつも泉くんは……。
私は、熱のこもった顔を少しでも冷やすために、深呼吸をして口を開く。
「ちょっと問題を見せてください。教えられるかは、わかりませんが……」
机に置いてあった教科書を手に取り問題を目で追います。どうやら泉くんは、数学の勉強をしていたみたいで、解き方がわからないようですね。
私には死ぬ前の記憶がありません。だから問題を見てもあまり力になれないと思っていたのですが……。
「泉くんこの問題、解けそうです」
「ほんとに! ゴーストちゃん頭いいんだ」
「記憶なんて残っていないはずなんですけどね。この式を見たら自然と解き方が浮かんできました」
「ゴーストちゃん俺に勉強を教えて!!」
泉くんが土下座をしながら頼んできました。
なんでしょうかこの気持ち。いつもからかわれているせいか、少し愉悦感があります。
「いいですよ、泉くん。私が教えてあげます」
「ありがとう。ゴーストちゃんに教えてもらえれば今回のテスト百点取れる気がするよ」
「百点は無理かもしれないですけど、私が教えるんですいい点取ってくださいよ」
「当たり前だよ。これで赤点取ったらゴーストちゃんに顔向け出来ないからね」
やる気満々の泉くんを見て、私も家庭教師ぽくしようと眼鏡を取り出します。眼鏡をかける寸前に、前言われた屈辱的な言葉が脳裏をよぎりました。
うぅ……早く忘れたい……。
「泉くん、前みたいにエ……ロい……なんて言ったら……即追い出すからね……」
「はい! そんな事言いません先生」
こうして、私と泉くんの勉強会は中間テストが終わるまで続いたのである。
愉悦を感じたゴーストちゃんは泉くんを追い出せなかった。
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