第5話【脱落そして判明】

 楽しい晩餐会、のはずが

 コリーと花見が二人まとめて、腹痛を訴えて二箇所ある屋敷のトイレに籠る事になった。


 共通して食べた物といえば、おやつ時のパンケーキだが。


「生焼けだったのでしょうか」


 皐月はデザートの桃ジェラードを口に運びながら、原因を考える。

 霜降も同じ事を考えていたが

 腹痛を起こすほどの状態ならば、流石に気が付くのではないだろうか。


 給仕係が二人しかいない為、パンはセルフサービスだった。

 バターやジャムの他に、レバーペーストも並んでいる。

 霜降は苦手なので塗らなかったが、あの二人は喜んで食べていた。

 もしかしたら。

 そしてあの人だとしたら、動機は。


「メイドさん、レバーペーストに何か混入しませんでしたか。おそらく、パンケーキ用の生の小麦粉を」


「私をお疑いですか!」


「あなたとコリーさんは今日会ったばかりではない、何か関係がある。そう睨んでいます」


「一体なぜそのような」


「先程コリーさんは、蜂蜜さんの事を名前で呼びました。それはあなたもです。

 彼女は礼儀正しい方です。激しいスキンシップは誰にでも行うわけじゃない。

 顔見知りどころの関係ではありませんね」


「なんだと言うつもりですか」


「私と皐月くんが来た時、ウェルカムドリンクコーナーに、グラスが5個残っていました。

 そして名我差のメンバーが来られない事になったので、被害に遭ったのは3人だと思いました。

 しかし、先程コリーさんは『2人は病院で戦っている』と言いました。

 計算が合いません」


「つまり、なんでしょう」


「コリーさんは、名我差のメンバーでもある。1人で2枠取っていたのです。

 ローマ字で書けばKORI。

 並べ替えれば、KIRO。正体不明のリーダー・キロさんです」


「くっ、だからもっとひねるように言ったのに」


「そしてキロさんと親しいあなたも、恐らく名我差のメンバーでしょう。

 メイドの仕事をしている所から、1人だけ招待されていない。TOP10に入れなかったんだ。

 余ったグラスはあなたの分。

 11番目の名探偵がここに居ると主張していたんだ!」


 メイドは膝から崩れ落ちて、絨毯に爪を立てると、唇を血が滲むほど噛み締めた。


「赤身肉!貴様が意味不明なランクアップをしたせいで!」


冥取メイトル!」


 蜂蜜ミツバの怒りに満ちた一声に、呼ばれたメイドは震え上がり

 ビクビクしながら立ち上がる。


「地球から一番遠い惑星、冥王星を掴むが如く、全てを知る探偵になるよう命じたはずですよ。

 今すぐ二人の元に行き、謝罪なさい」


 メイドは走って去って行く。

 晩餐会場は人気を無くし、ガランとしてしまった。


「霜降探偵、また正解です。

ワタクシは名我差の生みの親、あの子達の理事長ですの」


「冥王星って、一つだけ惑星から外されましたよね」


 皐月がひそひそ耳打ちをして


「探偵名がもう不吉だったんだね」


 霜降がこそこそ同意した。

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