第6話【優勝賞金】

 兄弟探偵はどこに隠れているのか?


 最後の問いは、壁に耳を当てて、異音を察知した霜降によって解かれた。

 晩餐会場に仕込まれた監視カメラを見抜いたのだ。


 日頃から兼業探偵に疑問を抱いていたクロスは、脅迫状を出した事をキッカケに蜂蜜ミツバに見つかる事となり

 今回の推理ゲームの犯人役を命じられた。


 地下倉庫と女主人の部屋は、隠し通路で繋がっていた。


「探偵抹殺チャンネルは盛り上げるためにワタクシの考えた嘘です。名我差のメンバーは無事ですよ」


 テレビ電話に映し出された女生徒二人は、病室でピースを決めている。


「総合的に見て、優勝は霜降探偵です」


「やりましたね!所長!」


 皐月が霜降を抱き上げる。

 雪白も月丘も、そして執事も惜しみない拍手を送った。


「賞金として、建築費五億のこの屋敷にいつでも泊まれる権利を与えます」


「えっ!?」


「あら、現金で払うとは書きませんでしたよ。オッホッホ」


 さ、詐欺だ。

 霜降は急転直下の衝撃で頭痛がした。


 + + +


「所長、眠れないのですか?」


 皐月は窓辺で星空を眺めていた霜降に声をかける。

 その目がゆらりとこちらを向いた。


「ずっと考えていたんだけど、今回の事で決心がついた。

 今の事務所を、移転しようと思う」


「移転?」


「前の所長から譲り受けた場所だから頑張ってきたけど、家賃が高すぎるんだ。

 交通の便や陽当たりが悪くなっても、もっと身の丈にあった所にしたい」


「そうですね」


「それから、他の仕事もしてみようと思う。兼業探偵になってみるよ。推理以外の何が出来るか分からないけど」


「わたしは、どうしたらいいですか?」


 霜降は、皐月の目の辺りを探して見つめる。

 視線が重なる事は無いけど、その気持ちだけは確かに伝わった。


「君の将来を考えたら、別れた方がいいのかもしれないと思っていた。

 でも、自分の気持ちに正直になる。

 付いてきて欲しい。君じゃないと駄目なんだ」


「分かりました。ずっと、一緒です」


 皐月は腕を引き、霜降を布団の中に引きずり込む。

 角度を変えて何度も、唇を重ねた。

 舌を這わせながら、寝巻きの中に手を入れた瞬間、ふと動きを止める。

 不思議そうに見つめる霜降を置いて、ベッドサイドのスマホの電源を切った。


「邪魔をされたら困りますから」


 薄カーテン越しの月明かりに照らされながら、お互いに、もう知らない場所が無いぐらいに、深く体を重ねた。

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