S2 WORLD Chenge

 次の日。

 学校に登校すると、皆んなが心配そうなを

 向けていた。

 それもそうだ。昨日まで全国優勝の噂で、

 笑顔を絶やさずに騒がしかった人間が急に

 無表情になったのだから。


(感情を失った分、相手の思考や周りを気にするようになったのか。おかげで周りの思惑が、いとも簡単に分かるようになったよ。)


 この状況は一昨日までの俺だと耐えられないレベルだった。

 例えるなら、給食の時間にでたパンを牛乳につけられて笑われるレベルだ。

(いやいやどんな例えだよ…)

 何も感じなくなったことは正直辛い。

 いくら冷静に周りを分析出来るようになったとはいえど失って辛いものは辛い。

 と思うのが普通であろう。

 だが、俺は何も感じなくなったことすら

 辛くなくなった。


 そんなこんな考えていると横から朝恒例の

 サッカー部のマネージャーである

 御厨 菜月がモーニングコールをしてきた。

「ナッシー!朝だよっ!起きて!!さもないと、天から天からが降ってくるぞ!あっ!

 天からっていうのは天ぷらと唐揚げって意味であれでこれで…!!」

(始まった。語彙力欠如トーク。)


 御厨について説明しよう。

 まず容姿。まぁ可愛いわな。なんたって学校ではある程度風の噂で誰々が好きと聞く位だしな。髪の毛はセミロング。少し癖っ毛だが。それが絶妙な可愛いオーラを際立ている。胸もそこそこあり、一部ではあのサイズこそがナイスバディと言われている。

 次に性格。一言で言うとマジエンジェ。

 優しさと無自覚に人を寄り付かせる面白さ。

 なんて羨ましいこった。

 ただ、唯一の欠点は運動音痴。ドジなせいか

 毎回の体育の時間に、こけては倒れて。

 ボール遊びも顔面キャッチも多々。

 本人はやる気に満ち溢れているようだが。

 ついでに、こいつは中学からの知り合い。

 む?よくよく考えると中々可愛いくないか?


「ちょっとぉ…ナッシー。聞いてルゥ?」

「ん?あぁぁ。アレだろ天から。」

「その話終わった。なんで元気無いのかって聞いてるの。どうしたの?」

「いや。お前には関係ない。」

「でた!アニメとかでもカッコいいキャラがよく言うセリフ!

 フッ。お前には関係ない。(イケボ風)

 でたよ!でた!腹立つ!何が関係ないよ!ホントナッシーは面白いわね!」

(こいつ。大丈夫か?将来心配だわ。)

「いや〜。真剣な話で朝から顔色悪いし。

 なんか焦ってる感じだよ?相談乗るよ?」

「いいって。大丈夫だから。顔色悪いのは寝不足。今は寝かせてくれ。」

「…うん。分かった。でも辛くなったら言ってね?私一応、保健委員だから。」

 そう言うなり離れていった。意外と物分かりは良いな。てか、

「あいつ。保健委員やん…ボソっ」

 そして午前は、全部の授業を寝た。


 昼になり、また御厨がきた。

「ナッシー。やっぱ体調悪いんでしょ。」

「いや。ホント大丈夫。お前ずっと俺のこと見てたのか?大丈夫だ。オールオッケーですオールオッケー。」

「何がオールオッケーよ。午前中一度も笑ってなかった時点でおかしいよ。いつも笑わない午前なんてなかったのに!」

(勘弁しろよ。お前の対応で疲れたわ。)

「なんだお前。あれか?カマちょか。カマちょだな。大丈夫だ。笑い方を忘れただけだ。」

「笑い方を忘れたって!大丈夫じゃないじゃん!ちょっと来て!」

 手を引っ張られ廊下と階段をモップのように引き摺られた。痛い…

 着いた先は保健室かと思いきや屋上だった。

 そこには、一年のサッカー友達が二人いた。

「おい。なんだこれは。何で二人がここにいる?マッドハッダーの狂ったお茶会でも開くのか?」

「マッドハッターな。」

 的確にツッコミをいれる顔面が如何にも、

 ダルそうな宮下 聖。

 その横にいるのは、男女が認めるイケメン

 兼自分でもイケメンと思ってる空色 優雅。

「分かってるわいっ!マッドハッターだろ!少女がモグラを追って地下鉄に乗る話に登場するアレだろ!」

『何の話?』

 普段奇怪な行動をする空色と御厨も不思議そうな顔をする。

「茶番はそこまでだ。本題に入るが高梨。

 今日のお前少し変だ。いや、少しどころではないぞ。昨日なにがあった?」

「いや。ホント何も無いって。」

「誤魔化すな。ネタは上がってる。昨日は、お前どこにいた。自分の口から言え。」

 ほぼ威圧だった。普段ダルそうな顔して

 こういう時は怖いんだよな。

 仕方なく俺は昨日起きた出来事全て話した。

 まずメールの件。そして、仮想世界の存在。更に仮想世界での敗北。


 三人の反応はそれぞれ違った。

「ふーん。嘘じゃん?」

 まず、アホヅラかまして馬鹿にする御厨。

「そんなことより今日のお昼は?」

 もはや聞いてないふりの空色。

「…。可能性としてはあり得る話か。」

 最初からあり得る話として考えていた聖。

 ん?こいつネタ上がってるって言わんかった?

「お前。ネタがどうたらこうたらって…。」

「あぁ。お前を喋らせる為の言葉。実際は、ネタなんて上がってない。」

「騙したな…。卑怯番宣だぞ!」

「卑怯千万な。卑怯番宣…ぷっ。」

 こいつが笑うとは、珍しいこともあったもんだ。

「んんんっ。それは置いといて。そのメールが元凶なのか?」

 取り乱しても復帰が早いのは流石と言わざる終えない。

「あ。あぁ。メールのこのリンクを押してインストールしたアプリからログイン出来た。」

「そうか。そのリンクをコピーしろ。そして、俺にも送ってくれ!」

 物凄い形相と目力で近づいてきた。

 そして、腕をがっしり掴まれた。

「怖いぞ!てか、いてぇいてぇ!」

「送ってくれるのか?!」

「おう。汗」

「なら俺も送ってくれ。なんか面白そう。」

「私も〜!なんか流行の風を感じる!」

「分かった。分かった。落ち着いてくれ。」

 しかし、事件が起きた。

 皆んなを宥めてから、リンクをコピーしようとした時だった。


「リンクがコピー出来ない?」

「えっ?な・ん・だ・と。」

 その時だった。

 プルルルル…プルルルル…!

 四人の電話が鳴り響き渡った。

「は〜い!ども!ゲームマスターのミナでーす!」

「この声は?ゲームマスター??てか、ミナっていうんですか。」

「ミナですよ。それで皆さん

 のお悩みにお答えしにきました〜!」

そして、急に目の前に姿を現した。

(この人。何でもアリだな。)

「おぉ。ロリなレディよ。僕の悩みを聞いてくれるかい?」

 最初に動いたのは空色だった。

「ロリっ?ロリ体型は嫌?」

「いや。むしろ好みです。」

「お姉さん体型は?」

「むしろ好みです。」

「とりあえず何でも好きなのね?」

「はい。更に悪魔やスライムな女の子は特に好きです。そんなイケメンな僕の悩みは女の子の下着を見たことがないのです。なので見せてください!」

「いいわよ。」

『いや!よくねーよ!』

 三人でつっこんだものの遅かった。

「はいっ。」

 ミナはスカートをめくった。

 柄は可愛いことにミカン柄だった。

「うほっ。この日のこと忘れません。」

 空色だけは鼻の下を伸ばしていた。

「かーらの。へーんしーん!」

 その瞬間ゴリラ男になった。

 先と違ってみかんパンツははち切れそうだ。

 パンツの前方は何かもっこりしたナニが?

「むふっ。どーぉ?」

 物凄いムさい声で質問された。

「おぇ。この日のこと忘れません…。」

 空色は気絶した。

 ミナは気絶を確認して、ロリ体型に戻った。

「真剣なとこ。あなた達の悩みはリンクコピー出来ない理由ね?」

「あぁ。そうだ。ミナのせいなのか?」

「うん。そうよ。余計な人が来れないようにするためよ。」

 そう言いながら、高梨に近づいて来た。

 しかし、遮るように御厨が割り込んできた。

「ちょっ。あなた誰!?ナッシーに気安く話しかけるなんて。ナッシーは今疲れてるのよ。あなたが優勝のことでストーキングしてストレスになってるならあっちいって!ナッシーにくっつくアブラ虫は即駆除ごふごっっ?!!」

 話が進まないからとりあえずヘッドロックで気絶させた。というか、こいつはこのロリ神様兼ゲームマスターのミナを現実世界の人間だと思っていたらしい。


「欲求不満なのね?その子。」

「いえ。こいつは、ただの馬鹿です。」

「それで、さっきから話を聞いているとリンクコピーして送ることは出来ない理由が貴方なら、逆にリンクコピーさせることを可能に出来るはずですよね?」

 唯一真剣に話を聞いていた聖が突然質問した。

「出来ますよ。それに貴方たちも誘う予定でした。」

 え?初耳メンディーなんだが。

「今からリンクコピーして三人に送っときますね。はい。送った。」

 いや。「はい。送った。」じゃねーよ。

 淡々とし過ぎだろ。

「じゃっ!あーし忙しいから!アデュー!」

 そして要件を終えたからか、とても満足そうな笑顔で勝手に帰って行った。


 次の日の部活後、インストールしてきた

皆んなでログインするため集合した。

「よし。皆んな準備はいいか?」

「おう!」

「いぇーい!」

「で?このアプリ何?」

空色のことは無視してログインの準備をした。

「じゃあ。皆んな、掛け声は覚えてるか?」

『もち!!』

「んじゃせーの。」

四人で円陣を組んで、

『ワールドチェンジ!』

と、声をあげログインをした。

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Vエースno10 真面軽 永遠 @ryu874

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