12-2

 ゲーマー同盟の方は、ガーディアンへの対処で忙しい訳ではない。全国大会にエントリーしているのはパーシヴァルとユーウェイン、ガレスの三人だ。


 何故にガラハッドは参加しないのか? 彼は何を考えているのか――その詳細は分からないだろう。誰も、彼の真相を知らないのだから。


 SNS上でもゲーマー同盟は全員エントリーではなく、むしろ全員がエントリーせずに偽ガーディアンや炎上案件に対処すると思われていた。


 そうした関係もあって、他のプレイヤーの中にはユーウェインとパーシヴァル参戦に強敵出現と警戒する人物がいるほど。


『残念だが、この大会を貴様たちの介入で白けさせるわけにはいかない!』


 ガラハッドは周囲を取り囲む偽ガーディアンを見て、敵意をこちらに向けさせようとしている。


 あくまでも大会の妨害をしようとする偽ガーディアンを何とかしようとしているだけなのだが、もしかすると別の意図もあるのかもしれない。


『白けさせる? それはお前達のSNSにおける行動ではないのか、ゲーマー同盟!』


 偽ガーディアンの一人がバズーカを構え、その引き金を引く。バズーカと言っても実弾系統の物ではなく、ビームバズーカだ。


 しかし、ガラハッドはシールドを構えるかのようなポーズをすると、目の前にはありとあらゆるものを防げそうな盾が出現する。


『お前達の様なチートプレイを推奨する様な連中こそが、正々堂々とプレイするプレイヤーにとって、邪魔だとは思わないのか?』


 バズーカのビームは全てシールドに吸収された。その攻撃が反射される事はなく、吸収された後には消滅をする。


 この光景を見て、遠距離が駄目ならば近距離武器で対抗しようと、ガーディアンの一人はビームスピアで接近するが――。


『何度も言わせるな! お前達の使う不正ツールは既に対策済みだ』


 今度は刀を構えるようなポーズを取ったガラハッド、右手に握られていたのは光で実体が見えないが、刀と思われるだろう。


 まるで、ガラハッドの攻撃は全てのチートツールに対抗できるかのように作られたかのような、隙のなさを感じる。


『更にもう一つだけ言っておこう。ARゲームはチートプレイヤーを決して許さない。チートに手を染めれば、それ相応の――』


 その先の言葉をガーディアンが聞く事はなかった。既にガラハッドが気絶させた後だからである。



 パーシヴァル、ユーウェインの二人はガラハッドがどのような事をやっているのかを知らない。


 この間はSNSをチェックしていない事もあり、周囲のギャラリーを見て様子がおかしいと思っても、他プレイヤーのスコアに驚いている位にしか感じていないだろう。


「まさか、こう言う展開になるとは」


「炎上勢力としては自滅なのではないか?」


「なりすまし勢力が撤退してくれれば、こちらとしても都合がいいが」


「一体、何を目的に動いているのか?」


 周囲のギャラリーの声も、おそらくはあの二人には聞こえていないのだろう。それ程に、バトルに集中する必要性が出ている。


 実際、リズムゲームパートで理論値が既に数人規模で出ている以上、パルクールパートを何とかしなければ上位に入るのは難しい。


 しかし、パルクールパートに関して言えばレッドダイバーも強敵の一人であり、真田さなだシオンも手ごわいと言えるだろう。


 ゲーマー同盟としては、他の有力メンバーのデータは集めたが、データが揃いきれていない人物もいる。


「SNS上の情報ばかりに踊らされて、という可能性も考えていないのかな」


 ユーウェインはモラルのないようなプレイヤーやパリピと呼ばれる勢力を嫌う。実際、他のゲームでそうした行為に走るプレイヤーを何人も見てきたからだろう。


 そうした事を踏まえ、彼女はゲームルールを守る事――それを第一にプレイしてきた。スコアはいまいちだったとしても、そのプレイしている光景を見て同調する人物は多い。


 有名ゲーマーのプレイや上級譜面プレイ等ばかりがピックアップされるようなリズムゲームで、彼女のプレイは貴重なのかもしれないだろう。

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