第十一話:衝突-ネオ・レッドダイバー誕生!-

 ヤルダバオトが姿を見せなくなってから二週間が経過しようとした五月下旬のある日、レッドダイバーと戦う予想外の人物がいた。


 彼女は地方ではゲーマーとして有名なクー・フー・リンである。当然、レッドダイバーも彼女の実力はチェック済みだろう。


「予想外の結果になった」


「まさか、こう言う展開になるとは」


「実力としてはクー・フー・リンの方が上のはず!?」


 動画を見て、驚くギャラリー。プロゲーマークラスで強いクー・フー・リンでも、レッドダイバーには勝てなかった。


 テクニックに大きな違いはないし、クー・フー・リンもリズムゲームプラスパルクールの初心者は脱出しているはず。それなのに、レッドダイバーには勝てないのである。まるで、何か足りないような気配もしていた。


「レッドダイバーの中の人が実はプロゲーマーなのでは?」


「ARスーツであれば、代理人がプレイするようなケースがあっても気付かれない」


「どもしくは、クーフーリンが手を抜いていたとか?」


 周囲の一部ギャラリーはレッドダイバーの勝利を認めない。そう思えるような発言も出ている。


 まるで、レッドダイバーをSNS上で炎上させようという気配さえ感じるだろう。そうした悪意が見えるのは明らかだ。


 彼らの場合はレッドダイバーに憎しみの感情がある訳ではない。だからと言って、リズムゲームプラスパルクールに敵意がある訳でもなかった。


 彼らは自分のストレス発散や承認欲求の為に第三者のコンテンツを平気な顔をして炎上させる。その後に何が起きても、彼らは責任を持たない。


 こうした無責任な炎上に対し、遂に草加市が動きだした。SNS炎上に罰金を適用する事になったのだ。


 これは都道府県や市町村でも初めての試みだろう。それ位に草加市は特定コンテンツがSNS上で炎上する事を防ぎたい狙いがあるらしい。


【こうした過剰な規制こそが、様々な暴走を生み出すきっかけになるだろう】


 このコメントは広く拡散されているのだが、誰がつぶやいたのかは定かではない。



 こうしたSNS炎上対策を実行したのには、理由の一つにガーディアンの暴走があるのだろう。


 どう考えても中学生にも満たないような学生まで逮捕していたらしいという現実が、草加市を動かした。


 ただし、これはあくまでもSNS上の仮説であり、実際にこうした出来事があったのかは定かではないだろう。 


(まるでレッドダイバーの後半展開に似ている様な――)


 さまざまなまとめサイトを見て、疑問に思っていたのは真田さなだシオンだった。


 今までも彼女はリズムゲームプラスパルクールをプレイしていたが、レッドダイバーとは当たらなかったのである。


 これには様々な理由があると思うが、マッチングするにはランクが足りないのだ。レッドダイバーのランクは最上位に近い。


 現状のシオンは中堅辺りで、上位ランカーにならなければマッチングは難しいだろう。


 彼女もブラックダイバーのニュースはチェックしており、上位に到達した事も知っている。


 しかし、自分もプレイ回数はブラックダイバーより上。どうして当たらないのか? 同じエリアでなければマッチングしないシステムではないはずなのに。


(レッドダイバーが真実を語るとも思えないが、直接聞くにしても――)


 SNS上にレッドダイバーのアカウントは探せばあるだろうが、そのほとんどがなりすましだ。本物のレッドダイバーに到達できた人物は確認されていない。


 特撮版のレッドダイバーも正体不明の箇所はあった物の、それは序盤までの話だ。中盤では変身者も判明しているのだが――。


 シオンの目の前には、ライブ映像が表示されており、そこにはレッドダイバーの姿もあったが、そちらに視線を移すことはなかった。興味がない訳ではなく、今のシオンには彼の壁が大きすぎるのかもしれない。



 ゲーマー同盟は、ガーディアンのまとめサイト記事を見て不信感を持つ。明らかに、このまとめは炎上させる事を目的に作られたものだと。


 確かいガーディアンが炎上勢力摘発にゴリ押しムードが広まっているのは事実だろう。


「明らかに使用するガジェットまで違う。実弾を使うとか、銃刀法を知らないのか?」


「まるで、ような展開だな」


 コンビニ前で話していたのは、私服姿のユーウェインとガレスの二人だ。パーシヴァルは別行動中、ガラハッドは別のARFPSイベントがあって出られない。


 こうした事情もあってか、今回の一件で動けるのは事実上、ユーウェインとガレスだけである。


「様々なガイドラインを無視する様な無法地帯の小説が、こうして拡散する時代なのか?」


 ユーウェインはまとめサイトの記事を見て別の意味でも呆れている。二次創作の夢小説勢力の暴走にも似たような、バズる事を目的としたSNS炎上行為は、まるでSNS上を舞台とした無差別テロと言えるだろう。


「どちらにしても、まとめサイトを摘発している勢力がガーディアン以外にもいるという噂が――」


 ガレスがふと別のまとめサイトを開こうとタブレット端末でサイトを開くと、まさかの表示に驚いたのである。


「エラーではない。正常に表示されているようだが、これは――」


 エラーで表示されない、唐突な閉鎖の告知、著作権侵害の影響で閉鎖――そうした理由ではない。


 このサイト、よく見て見るとまとめサイトではなかったのだ。そう言う風に見えただけと言うべきか?


 現在は大手ニュースサイトにのである。一体、誰がこのような事をしたのか?

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