11-2

 草加駅の近く、そこにあったARパルクールのフィールド、そこにはARスーツとARメットを被って完全装備状態のパーシヴァルがいた。


 彼女はリズムゲームプラスパルクールをプレイする為に訪れており、既に数回ほどプレイ済みのようである。


(なるほど。ユーウェインの言っている事は、これか)


 まとめサイトをARバイザーで確認する辺り、やはりというべきなのか。周囲に人がいない事を確認してからチェックしているので、通行人にぶつかる心配はない。


「それにしても、ゴールドダイバーか」


 ユーウェインの言及していた便乗レッドダイバーとは違うが、マッチング待機のリストにゴールドダイバーと言う名前のプレイヤーがいた。


 デザインはレッドダイバーに似ているので、アバターはそちらを使い、カラーリングが、と言う事かもしれない。


(便乗であれば、レッドダイバーの基本カラーが赤である以上、他の色にするのは意味がない)


 レッドダイバーは赤なので、赤以外のレッドダイバーが出てくる事は自分のアピールが強く、便乗犯などとは違う気配がする。その事例になるであろう人物がブラックダイバーなのだが。


 一方で、レッドダイバーはブラックダイバーとは違うものの、それに近いプレイヤーとマッチングする機会があった。


 その相手とは、ゴールドダイバーを自称している。戦隊物だとゴールドはいたかもしれないが、レッドダイバーにゴールド自体は存在しない。


 別のヒーロー物に影響しているのか? レッドダイバーにとってはどうでもいい事だろう。


 デザインはレッドダイバーに酷似しているが、メットの箇所だけ形状は異なる。カラーリングが違うのも当然だが、全身が金ピカと言う様な物ではない。


 金色なのは一部アーマーやメット部分だけと言う事かもしれない。


(まさか、他のガーディアン等の様子を見るつもりが、こうなるとは予想外と言うべきか)


 ゴールドダイバーと名乗る人物の正体、それは七瀬時雨(ななせ・しぐれ)だった。本来、リズムゲームプラスパルクールに参戦してダイバーの存在を探るつもりが、予定が大幅にずれてしまった様子。


(黄金のダイバー、ガーディアンとは違うようだが――)


 レッドダイバーの方もゴールドダイバーに興味を持っている。しかし、周囲のギャラリーはゴールドダイバーに興味を持っていないように見えた。


 あくまでも有名プレイヤーではないと興味がないという事だろうか? プレイヤーネームを見てもピンとこないのも理由かもしれない。


『レッドダイバー、いずれマッチングするとは思っていたが――このタイミングとは』


 ゴールドダイバーはレッドダイバーの方を見つめるが、他のマッチングするプレイヤーにはレッドダイバーしか視線に入っていない。


 四名同時レースと言う展開になったのだが、周囲のギャラリーはレッドダイバーの圧勝で終わると思っていた。


 実際、ゴールドダイバーのプレイスキルは有名動画も存在しないので未知数だが、他のプレイヤーを踏まえると明らかに、かませ犬と思われている。


『こちらとしても、全力で挑ませてもらう』


 レッドダイバーはゴールドダイバーを若干気にしているようでもあった。周囲のプレイヤーはレッドダイバーが自分に眼中がないとにらんでいるようだが。



 しかし、実際のレースはレッドダイバーもギャラリーも想定外だった。


 リズムゲームパートとしては微妙な気配もしたのだが、ゴールドダイバーの動きはパルクールプレイヤーのソレと同じだったのである。


「こんな事があるのか?」


「確かにリズムゲームプラスパルクールにはパルクール要素はあるが――」


「あのプレイヤーは、パルクールのプロプレイヤーの可能性だってあるだろう」


「しかし、ARゲームの場合にプロアスリートが勝てる可能性は少ないというデータもある」


「プロアスリートでもARゲームでは感覚が違うという話だな。しかし、あの動きはプロパルクールプレイヤーと言うよりは――」


 まるで、リズムゲームパートはスルーしているような――そう思えるような展開を周囲が感じる位のスキルを彼から感じたのだろう。


 むしろ、あの動きはARパルクールのプロゲーマーと言う可能性だって否定できない。


「常識が通じないのか?」


 ゴールドダイバーの動きはリズムゲームパートが微妙な事以外は、そこそこの実力だった。


 他のプレイヤー二人もリズムゲームパートは何とかなっているが、パルクールパートの方は、実力差があり過ぎる。


 レッドダイバーは両方をバランスよくこなしているのだが、ゴールドダイバーのパルクールアクションには驚きの感情さえ抱く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る