6-2
クー・フー・リンがレッドダイバーのデータを見て驚いている光景を見ていたのは、インナースーツ姿の
インナースーツでもアンテナショップに入店する事は可能なので、それを踏まえると不審者と言う訳ではない。
(そう言えば、あの端末でデータを閲覧できるはず)
シオンは自分のデータをゆっくりとチェックしようと考えていた事もあり、マルチ端末で検索できる情報をSNSで入手した。
それを踏まえてデータを調べようとしたのだが、既に先客がいたのである。別のプレイヤーが使っていない他の端末もあるが。
(気付かれた?)
端末でデータを検索していたクー・フー・リンの方は、若干焦っているようにも見える。
しかし、そう言ったリアクションをする事でガーディアン等に行動が見破られてしまう危険性も否定できない。
それを踏まえ、あえてポーカーフェイスを演じようとするのだが――それも無駄と言う可能性を考える。
(逆に端末を独占しているプレイヤーとして晒される方がまずいかも)
後ろにシオンが並び始めた事もあり、クー・フー・リンは端末を離れる事になった。すぐに空いている隣へ移動する事も考えたが、一応の目的は達成したので今回は帰る事に。いわゆる出直しである。
次の順番がきたので、今度はシオンが端末でデータの検索をしようとするのだが――。
(そう言えば、この端末の使用料って――)
こうした端末の場合、百円で一定時間閲覧可能のようなパターンなのではないか、とシオンは考えた。
しかし、コインの投入口は端末に見当たらないし、ARプレートと言うARゲームで使用するプレートを認識させる為のタッチパネルもある。そこにARガジェットをタッチする事も認識は可能だろう。
電子マネー形式だと自動的にお金が減りそうと考えるが、調べようとしているのがリズムゲームプラスパルクールでのスコアなので、そのまま画面の指示通りに進めていく。
(特に指示がなかったから、これで問題はなさそう)
その後、指示された通りにシオンは自分のARガジェットをタッチエリアにタッチし、データを読み込ませる。シオンが使用しているのは、腕に装着するガントレットが立と言うべきタイプで、汎用タイプとしても広まっている物だ。
ローディング画面から数秒後、シオンの現在レベルなどが表示されるのだが、若干のため息が出る。
「ゲームジャンルも違うから、こう言う感じかな」
数回のプレイで上位に入られるとは到底思っていないが、別の意味でも予想外の結果と言えるだろう。
総プレイヤー数を踏まえれば、今の順位は下位。総合順位は約五万人の中で一万位と言う表示だが、休眠プレイヤー等を踏まえるとアクティブな人数がどれ位なのか見当もつかない。
(一桁のプレイ程度で実力が測れるとは到底思えない。複数アカウントもあり得ないだろうし)
一般的に他のゲームでは複数のアカウントでプレイして有利になろうと考える人物もいる。
しかし、ARゲームでは複数アカウントは禁止と決められており、発覚すればアカウント凍結は避けられないだろう。
アカウントを削除していれば表示される訳はないので、もしかすると一度プレイしただけで放置しているアカウントなのかもしれない。
さすがにアカウント転売も発覚すれば、炎上は決定的と言える。シオンも、そう言った事例に関しては何度か見ているのだから。
アンテナショップの外に出て、何かの着信音が鳴っているスマホを取り出したクー・フー・リンは、表示されている名前を見て疑問に思う。
(見た事もない名前のようにも見えるけど――)
ヤルダバオトとは表示されているが、どう考えても何かの間違いとは思いたい。
SNS上で炎上勢力とも言われている筆頭が、ヤルダバオトなのだから。
着信音は通話ではなくショートメッセージで設定していた物だった為、その後に表示されたのはメッセージである。
【レッドダイバーの正体、興味はないか?】
これを見た彼女は、この発言を全く信用せずにスルーしようとさえしていた。実際、ヤルダバオトと言う名前を騙ったなりすましアカウントは一部が晒しサイトにアップされている。
その後、しばらくしてスマホから着信音が鳴るのだが――今度は通話だった。
『クー・フー・リンね?』
声は明らかに女性である。チェンジャーを使っている気配はないので、ARメット等は被っていないという事だろう。
「そうだとして、あなたは一体――?」
『くれな――じゃなくて、今はユーウェインを名乗っている』
「何処から電話を」
『そこまでは聞かない方がいいかもね』
電話をかけてきたのは、ユーウェインである。彼女はSNS上に記載されている連絡先に連絡をしたに過ぎない。これがフェイクであれば彼女もスルーをするつもりらしいが。
「ユーウェイン? ゲーマー同盟の?」
クー・フー・リンも思わぬ人物が接触してきた事には驚く。さすがにリーダーと思われる人物が接触をしてきたら、態度も変わりそうだが。
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